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第4章 元カレとお世継ぎ問題 第4話
自然が四季によって様々な色を見せるように、恋にもいろんな色があるんだと知った。一面ピンク色かと思えば、紫色に妖しく染まることもある。出会いは新緑の緑。寄り添って眠る時間は、薄い黄色やオレンジ色の陽だまり。海の底へ引きずり込まれるような溺愛は、周りが何も見えなくなるくらいの蒼。彼の息遣いのほかは、音も聞こえないんじゃないかって……そのうちに、頭の中が真っ白になる。
恋は、幸せだけど怖い。怖いけど幸せ。天にも昇る心地と同時に、深淵を覗き見る。両極端の感覚に、のめり込んでいく。
「はぁ……」
昨夜もすごかった。と、口に出すわけにはいかないけど。王宮の裏庭、人気がないとはいえ、どこで誰が聞いているか分からない。それに、僕一人というわけじゃない。
「はい、これでよし、と。小さい傷だけど、大事にするんだよ」
こくん、と頷くのはいつもの銀のペガサスだ。僕がここにいるのを見て、一目散に飛んできた。かわいいんだけど、本当に、けがはあまりしないでほしい。
「ん? 僕が何をしてたのかって? ほら、この花を見ていたんだ」
本来は南半球にしか見られない、黄色い花。沖縄で見たハイビスカスに似ている。婚礼のお祝いの返礼にと、アリシア様から届いた品の中に、この花の種があったそうだ。裏庭の斜面は日当たりがいいせいか、毎年よく咲くという。兄の元カレの妻と言う、何とも複雑な立場に置かれた妹姫の、せめてもの想いなのかな……という気がする。
絡み付いて蔓を伸ばしているのは、赤紫色のクレマチスだ。元の世界の僕の家にも、毎年咲いている。念のため図鑑で調べたら、説明の最後の方に「なお、クレマチスともいう」とあった。ここでの呼び名はあまりにも長くて覚えられない。初代の王妃様のお気に入りだったそうで、北半球の国花のような扱いだ。巻き付いて離れず、あでやかで……何だか、ラトゥリオ様を連想する。
ぺろっ。ほっぺたを舐められた。
「ふふっ、くすぐったいよ」
勝手にシルバーと名付けたこの子は、僕の心を読めるみたいだ。そこへ、足音が近付いてきた。ラトゥリオ様のものじゃない……少し、軽い。
姿を見せたのは、柔らかそうな金色の髪の、長身の男性。表が白、裏地が金色のマントを纏っている。身長は百九十センチくらいだろうか。年は三十くらい。マント以外の部分も、白と金を基調とした服装。瞳の色は、鮮やかな緑色だ。……ん? それって。聞いていたより若く見えるけど、まさか、まさか――!
「ふーん? なるほどね。君のためにラトゥリオは、この世界を僕に押し付けて死のうとしたってわけか」
光を転がすような明るい声に、厭味はない。この人には、それだけのことを言う権利がある。
「アントス様……?」
「当たり」
南半球の王は、にこっと笑って右手を差し出した。
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