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第5章 家族 第2話
三時間ギリギリでお風呂まで済ませて、二人ともガウンで食堂へ。お姫様抱っこでイレミオに朝の挨拶。恥ずかしい。
「レオ、どこか痛いの?」
「うーん、強いて言うなら腰が少しね」
「かわいそう。誰のせいなの? 僕、やっつけてやる!」
七歳になったイレミオは、最近は英雄物語に夢中だ。賢くて勇ましい子だから、見様見真似で剣術を研究したり、魔力をコントロールしたりすることに余念がない。実の父親から水の力を、母親から中和の力を受け継ぎ、風の力も併せ持っていることが判明した。三種の力となると、ラトゥリオ様ほどではないにしろ、ゆくゆくは用心が必要になる。ただ、中和の力を本人が持っているから、深刻な事態は避けられるはずだ。
僕には、初対面の時から懐いてくれた。養子に来た日はさすがに南の両親を想って泣いたけど、今ではアリシア様が使っていた部屋を居室にしてすっかり馴染み、すくすくと育っている。ばあやとして付き従ってきたのは、アリシア様がお嫁入りの時、南へ連れていった女性だ。ラトゥリオ様とアントス様の恋を、間近で見守っていた一人。僕にも、とてもよくしてくれている。イレミオの無邪気な勇気ある発言には、どう反応したものか困っているけど。
僕は椅子に下ろしてもらいながら、彼女に頷いた。
「誰のせいかなあ。僕のせいかもしれないね」
ワクワクして目を輝かせていた坊やは、小さな拳の行き場をなくして残念そうだ。
「レオのせい? 何で?」
「僕が、ラトゥリオ様を大好きだから。うわっ、大丈夫ですか」
コーヒーが変なところに入って、むせてしまった国王陛下。吹き出さなかっただけましかもしれない。王子様は、綺麗な翠玉を天井へ向けて少し考え、伴侶の背を撫でる僕に目を戻した。
「好きだと、痛くなるの? いけないことなの? わかんないなあ」
「イレミオ様、もうそのぐらいで。ご飯にいたしましょう」
際どいところでばあやが口を挟んでくれて、助かった。咳き込むのがやっと止まったラトゥリオ様は、僕だけに聞こえるように囁いた。
「今夜も覚えておけ」
そんな平和な、ある日のこと。僕は例によって少々体が怠く、三階の、裏庭に面した広いバルコニーで日向ぼっこをしていた。ここは、ラトゥリオ様が王子の頃に使っていた部屋に通じている。ベンチやテーブルがあり、イレミオが来てからは、裏庭を見下ろしながらお茶や食事を楽しむ場所となっている。初夏の風が心地いい。長いベンチにクッションを敷いて寝そべり、頭はラトゥリオ様の膝の上。小さな王子は、僕の足元にちょこんと座り、さっきから一生懸命何かやっている。もう少し背が伸びたら、マントを新調してあげないといけない。
新緑が綺麗だ。この世界に来て、三年経ったんだなあ。
シルバーが、ガールフレンドと連れ立ってバルコニーに降り立った。彼女は空色の毛並につぶらな瞳のかわいい子で、イレミオとは特に仲良しだ。何してるの?と小さな手の中を覗き込んでいる。その動きに惹かれて、僕も何気なく見た。何だ、あれは……魔力の発動を示す稲妻が光の玉になって、向かい合わせた両手の間に浮かんでいる。
「ねぇ、レオ。これなぁに?」
イレミオは、立ち上がって僕に玉を見せた。
「ん? ……嘘、だろ」
球体の中に人の姿が見える。僕に気付いて、声を上げている。ああ、こんなことって!
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