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第16話
「さぁ、机片付けてご飯食べましょっか?」
新がリビングに向かいながら声をかける。俺もその背中越しに部屋を覗き込み、思わず目を見開いた。
「え……」
さっきまで所々に散らばっていた色画用紙の残骸は跡形もなく消え、テーブルはピカピカに拭き上げられている。それどころか、弦たちの鎧と剣が、まるで五月人形の飾りのように美しく整列して飾られていた。
「……蜷川さんって、だいぶ仕事できますよね?」
ぼそっと新が呟く。俺はわが事のように鼻を高くして、「営業部のエースやからな」とドヤ顔で後輩自慢をしてみた。
「はい、手も綺麗に洗ってきましたよー!」
そう言って蜷川に背中を押された二人は、さっきとは違う、暗めの色のTシャツに着替えていた。カレーのシミを想定した「カレーばっちこい」のフル装備や。
「……ほんと、今、尊敬の念がすごいです」
あっけにとられている新の背中を笑いながら軽く叩き、一緒に料理を運ぶ。
「はい、三人はアンパンマンカレーと、果物たっぷりヨーグルトな?」
「くうちゃんのカレー、おっきー!」
「おれ、くうちゃんのがいい!」
「弦くんがこれ食べたら、お腹ぼかーん!って爆発するで?」
「ふふっ、こうも、ぼかーん!」
「くうちゃんも、ぼかーん!」
「くうちゃんはおっきいから、ぼかーんってなりませーん」
三人のやり取りに笑いながら、俺は蜷川の肩をポンと叩いた。
「足りんかったら、新が多めに魚焼いてくれてるからな」
「新せんせぇ、ありがとぉー」
「どういたしまして。たくさん食べてくださいねー」
蜷川の子供っぽい真似に、新もいつもの保育士さんのトーンで返す。なんや、この短い時間で相当仲良くなったみたいやな。真逆に見えて、意外と気が合うんかもしれん。
椅子に座っている蜷川、弦、洸。
最後にお茶を持ってきて、ふと気づいた。……これ、椅子足らんな?
「……椅子」
そうや、2階の物置に小さい脚立があったような気がするな。
とりあえずお茶をテーブルに置いて、脚立を取りに移動しようとした拍子。
「「元宮さん、ここどうぞ」」
二人の声が重なり、同時にこちらを向く。
新はまだ空いている椅子を引いて「どうぞ」とエスコートするように導いてくれている。対して、蜷川は……お前、両手を広げて何してんねん。
「……え?」
「……俺のお膝でよかったら、空いてますけど?」
「アホか、俺のこといくつやと思てんねん!」
思わず吹き出しながら、顔に熱が昇るのがわかった。
ほんま、こいつは。ちょっと気を抜いたら、すぐこうやって俺のことを揶揄ってくるんやから。
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