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プロローグ
ギシ…ギシ…
古い宿屋の客室。閉ざされたドアの隙間から微かな物音が漏れている。
夜の静寂を縫うように、甘く熱を帯びた空気が廊下へと滲み出していた。
「っ、あ…ぅ…っ、レイ、…レイモンド、もう…っ!」
ベッドに体を沈め、顔を真っ赤にしながら必死に喘ぐ若き主君、アルバート。
乱れて額に張り付いた柔らかい甘栗色の髪を、レイモンドは慈しむように優しく撫で、目を細めて微笑んだ。
「ああ…旦那様、なんて可愛らしい」
その声には隠し切れない欲情と溢れんばかりの慈愛が滲んでいた。しかし、ガクガクと震える腰を掴む手には一切遠慮が無い。力強い腕はアルバートを逃さないと言わんばかりに、熱い繋がりを一層深く埋め込んでくる。アルバートの喉から、押し出されるように吐息が漏れた。
容赦なく最奥を突かれるたび、古いベッドがギシギシと苦しそうに音を立てる。
「あっ、あ!待っ…イ、クっ、イクぅ…ッ、ああぁっ!」
狂ったように背を反らせるアルバートを支えるため、レイモンドはその細い身体を強く抱きしめた。
腹に濡れた感触があり、アルバートの体内が絞り上げるように締め付けてくる。レイモンドはゴクリと生々しく喉を鳴らすと、アルバートの耳にピッタリと口をつけ、掠れた声で囁いた。
「旦那様…少しだけ、耐えてください」
「っ、〜〜ッ!?」
腰を強く掴み直し、逃げ場のない奥底へと未だ熱く脈打つ昂りを激しく叩きつけた。
アルバートは大きく目を見開き、白い喉がヒュッと鳴る。あまりの過激な追い打ちに、涙で滲む視界が揺らぎ、思考が白く飛んだ。
「っ!…っ、ま、だ…ッ、イッて、あ゙っ、アァ!!」
「く…旦那様…アルバート様…っ!」
腹の奥で熱いものがジワリと染み込んでいくのを感じながら、アルバートはゆっくりと震える息を吐いた。重くなる瞼とは裏腹に、体がふわりと浮くような感覚を覚える。
(あ…落ちる)
そう思ったアルバートは、心地良い感覚に逆らうことなく、カクリと意識を手放した。レイモンドはぐったりと動かなくなったアルバートをしっかりと抱きしめ、その泣きはらした目を優しく撫でる。脳裏に、幼い頃なかなか寝付けずに泣き続けていたアルバートの姿が浮かぶ。ふっと口元を緩めたレイモンドは、アルバートの乱れた体を簡単に整え、薄い毛布を2枚、眠る彼の体にふわりとかけた。
「ご無理をさせて、申し訳ありません…旦那様」
大きく分厚い手が、アルバートの白い頬を撫で、額に愛おしげに口付けが落とされる。
その時だった。
窓の外で何かがカサリ、カサリと音を立て、黄色い目をした3体の魔物が、じっとこちらを見ていた。コウモリのような犬のような姿をしたその魔物達は、眠っているアルバートを舌なめずりをしながら見ていた。質の悪い纏わり付くような魔力がジワジワと漂ってくる。
(魔物…!)
レイモンドがベッド脇に立てかけてあった剣を手に取った。切っ先からジワリと濃い魔力が溢れ、一気に部屋中に広がった。迷うことなく剣を振るう。剣から放たれた魔力の刃は、窓をすり抜け、魔物の体だけを的確に真っ二つに切り裂いた。
部屋に再び静寂が訪れる。聞こえるのはアルバートの規則正しい寝息だけ。
レイモンドは息を一つ吐くと、ローブに袖を通し、剣を腰に下げた。そしてベッドで眠るアルバートをもう一度見つめる。
「必ず、私がお守りいたします」
未だ熱が残る部屋の中。その呟きは誓いの言葉のように、強く甘く、夜の闇の中に溶けていった。
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