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第49話

和樹は、唐突に前世の話を始めた。 「稔は、前世で友井和樹だった事を覚えてるよな。  俺も、前世で赤坂稔だった事を覚えてる。  前世で俺は、和樹の事をただの親友だと思っていた。  でも、和樹が俺の前から消えてから、和樹が俺の半身(はんしん)の様な存在だったことを理解した。  その事に気付くのがあまりに遅くて、俺は和樹と結ばれる事は無かった。  その後、高校の一時期だけ付き合っていた水流瑞樹に再会した。  お互い、熱い情熱とかは無かったけど、程々に仲良くて、その、結婚した。  だから、今でも瑞樹って名前で呼んだりはするけど、好きだからじゃない。  会っていたのも、探し物を手伝ってもらっていただけだ。  生まれ変わって、お前と出逢って、俺は、お前に惚れた。  前世の気持ちは関係なく、俺はお前が好きだ。  もし、前世の気持ちの延長線上(・・・・)にいるなら、もう一度考えて欲しい。  お前は、俺を好きだと思えるか?」 和樹は稔だった。 嬉しくて、でも、ちょっと意外だった。 和樹は、稔っぽい所はあまり感じなかったから。 前世の気持ちの延長上か。 それは、多分違うな。 だって、俺は和樹の事を自分だと思って見ていたんだから。 稔だなんて思ったことが無かった。 最近は、全くの別人かも知れないって思いながらも、他の奴に手を出されたくないと思った。 でも、これだけはちゃんとハッキリ言っておかないとだな。 「俺は、一人の人間として、お前が好きだよ。でも、でも、ちょっとまだ、お前を抱きたいっていう気持ちは、無いんだ。その、他の奴に触られたくないとか、俺以外のやつに優しくしないで欲しいとか、俺を一番優先して欲しいとか、そういうワガママな気持ちばっかりなんだけど。でも、お前を幸せにしたいって思ってる」 触りたいな、とか、チューしたいな、とかは思う時はあるんだけど。 抱きたいなとかは、ちょっとまだ思ったことが無くて。 そこだけは、ちょっと、もうちょっと待っていて頂きたい所存(しょぞん)だ。 「……そう、か。」 和樹が、ちょっと驚きながら考え込む。 そうだよな。男が肉欲(にくよく)なしに好きとか言っても理解できないよな。 「因みに、俺は、お前を抱きたいと思っているんだけど。そっちは想像した事あるか?」 ……ん?そっち? …………え?俺が抱かれる方?! 考えた事も無かった事を言われて、思わず和樹の全身を上から下までジロジロ見てしまった。 和樹を俺が抱くんじゃなくて、俺が和樹に抱かれる? ブワッと顔に血が集まってくるのが自分でもハッキリと分かった。 和樹が、とても嬉しそうに顔を綻ばせる。 何でそんなに嬉しそうなんだよ。別に、何も言ってないだろ。 「そうか。まぁ、今まで待ったんだから、あと数年くらいは待ってやるよ。大学生になったら、一緒に部屋でも借りて住もうな」 何も答えてないのに、頭を撫でるな。 わしわしと無遠慮に頭を撫でてくる手を振り払いたいのに、その手がちょっと嬉しい気もして、何も出来ずに撫でられるがままになってしまった。 「って言うか。お前、出会い系とか登録して、どういうつもりだよ」 居た堪れない空気に耐え切れず、ついアプリの話を掘り返してしまった。 今、そんな話は掘り返すべきじゃなかったなとも思うけど、もう居た堪れなさ過ぎてどうしようもなかった。 「いや、登録はしてない。調べてただけだ。稔こそ、そんなの登録するなよ」 と、返されてしまった。 確かに。QRコードが印刷されたのを置いていただけで、アプリを起動していた訳じゃない。 「俺だって、気になって調べただけで、アプリも入れてない」 アプリを検索した画面が開いていただけで、俺だって登録していない。 俺がつけていた画面に、入手って書いてあることが証拠だ。 デデンとスマホを和樹に見せたら、また頭を撫でられた。さっきから何だ。子供扱いか。 「あーー!そう言えば!さっき、水流さんとけ、け、け、結婚したとか言ってたよな!」 俺たちには、まだまだ話し合わなければならない事がたくさんあるようだ。

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