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第12話 君のあだ名は。

──翌日 昨日より少し遅く学校に着くと、教室には既に数人の生徒がいた。 やっぱり今日も月城くんは、机に突っ伏してスースーと寝息を立てている。 よく寝る人だな…。 起きたら、なんて声をかけよう……。 昨日の月城くんの艶かしい声、紅潮した頬(と緋美のキモい声)が脳裏から離れない。 はぁ…目が合ったらもっと、思い出してしまいそう…。 気まずいな…。 キーンコーンカーンコーン チャイムが鳴り、月城くんがぼんやりと目を覚ました。 隣の俺に気付くと、眠たげだった顔がぱっと綻んだ。 月「あ、こーくん!おはよう!昨日はありがとうね。うちに来てくれて嬉しかったよ〜!」 光「お、おはよう。こちらこそ…」 「ありがとう」…と続けようとしたけれど、自分の中の何かが、その言葉を発することを許さなかった。 女1「えーっ!朝からこんなに元気な月城くん初めて見たかも!!2人、いつの間にそんなに仲良くなったの??」 隣の席の女子にそう言われると、月城くんはポッと頬を桜色に染め、 月「昨日、僕の家で色々あって…」 月「それで僕、こーくん(の血)のこと、大好きになっちゃったんだよね!!」 いやーーー!!語弊語弊語弊!!!!! 誤解生む言い方やめて〜〜!!! 血が主食ってことはみんなには言ってないんだろうから、訂正もできないじゃん!! 俺が何も言えず焦っていると、 月城くんの爆弾発言に驚いたクラスメイトが、わらわらと集まってきた。 男1「日向野…すごいな…転入して数日で、あんな美人落とすなんて…!さてはかなり場数こなしてんなお前!!」 女2「月城くんって誰とも深く関わらないイメージあったのに、日向野くんってもしかして、恋愛経験豊富な感じ??」 いや俺はピュアッピュアの童貞拗らせボーイだからこそ、月城くんに好かれていて…… なんて説明もできず(したくもない)、クラスメイト達の羨望の眼差しがただただ痛かった。 そんなみんなの勘違いなど気にも留めない様子で、月城くんはニコニコしながら俺を見つめている。 この笑顔が、卑怯なんだよな……。 ──────── それから、月城くんはやたらと俺にベタベタしてくるようになった。 「こーくん、次音楽だよ〜♪音楽室行こう♪」 そう言って俺の腕を掴み、上目遣いで俺(の首)を見つめてくるし、 体育が終わるといつも、 「こーくん、大丈夫?今日は鼻血出てない?どこか怪我してない?」 と、心配そうに(×出血目当て)駆け寄ってくる。 クラスメイトは温かい目で見守ってくれているけれど、陰では俺を『ビッグダディ』『パーフェクトスティック』『暴れん坊将軍』…なんて呼んでいることも知っている。 ビッグでもパーフェクトでもないし、暴れたこともないよ…。 みんなのイメージが実際の俺と掛け離れていく……。 そう悩んでいるそばから、月城くんが、 「こーくん、汗かいてるよ、拭いてあげる♡」 そう言って柔らかなハンカチを俺の首元に当てて、優しく汗を拭っていく。 首狙ってるだけだろ…! どっちかと言えば月城くんが将軍じゃん! ちなみに月城くんも陰で『将軍の嫁』って呼ばれてるからね!? 早く血が飲みたい月城くんと、まだ飲まれるのが怖い俺。二人の関係性は全く変わっていないのに……。 でも、本当の事情を知られるわけにもいかないから、 下心で過剰に世話を焼くこの『嫁』を、甘んじて俺は受け入れていた。

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