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第68話 反社の天使。

「し…静夢、何回って…その、方法を、わかってて聞いてるんだよね?」 「うん、知ってる。目合いでしょ。目合いが、性行為なのも知ってる。でも僕は今、エッチな話が聞きたいわけじゃなくて、真剣なんだ。早くこーくんと同じになりたい。お父さんしか聞ける人いないの。だから、教えて?」 「何回?」 この子、天使の皮を被ったヤクザなの!?怖すぎる…! お父さんとお母さんはしばらく視線を泳がせたあと、無言で顔を見合わせた。 緋美はガムシロを三つ投入したアイスカフェラテを、ストローでブクブクと吹いている。さらに耳まで塞いで、親の情事の話から必死に逃れようとしていた。 「…変化が出てきたのは…」 「5回目…くらいからかな…。」 答えるまで終わらないと悟り、腹を括ったお父さんが上擦った声でそう答えると、 「それは、1日でじゃないよね?どのくらいの期間で?」 落しの鬼刑事さながらの尋問に、耐えきれず静夢以外の全員が目をつぶり、無言でしばらく天を仰いだ。 「静夢……。俺たちにとって、紅美が食事から栄養が摂れるようになったことは、副産物というか…。目的はそっちじゃなかったから、ここでは答えにくいな…。」 「静夢だって光くんと何回したとか聞かれても困るだろ…?」 「まだゼロだよ。男同士だと色々と難しくて。最初は僕がこーくんに入れるつもりで、精通までさせてもらったけど、お尻が綺麗な僕の方に入れた方が早いって話になって、それから…」 「ちょっ…!静夢…!!待って!!!もうやめて!!」 俺は居た堪れなくなり、両手でワッと顔を隠して俯いた。 せっかく感動的な再会だったのに! 親と猥談なんてあり得ない!気まずすぎる…!! 「…静夢が早く光くんに近づきたいのはわかった。でも俺は、回数なんて気にせず、その過程を楽しんで欲しいな。二人が密やかに愛を育む日々の延長線上に、食事を摂れる未来があるんだから。焦らず、一歩ずつ。時には寄り道しながら進んでいくのも、二人には合ってると思うよ。」 「あと、どうしても気になることがあったら、LINEでこっそり聞いて?ね?LINE繋いどこう。」 一歩ずつ…か。 お父さん、緋美と同じようなこと言ってる。 やっぱり、親子なんだな。 静夢はLINEを繋いでいたが、その顔は不服そうで、もっとヤバい質問を沢山準備していたのだろう。 「…とっ!ところで、お父さんは、どんなお仕事されているんですか??」 気まずい空気を一掃しようと、健全な話題を振った。 「あ、ああ。俺はAIの基盤技術を研究してるんだ。今は民間企業の研究所にいるよ。」 ジョニーデップの風貌でAI研究!?『トランセンデンス』のウィル・キャスターじゃん…!かっこよ…!! 「AIの研究ってすごいね!でもさAIってみんなが便利だって言うけど、僕のチャッピーはさ、話を濁したり、『静夢にはまだ早い』って言ったり、全然ハッキリした答えをくれないんだ。何かおかしいのかな?」 「そうなのか?ちょっとスマホ貸してみて。」 「… ああ、子ども向けのプロンプトが設定されてるね。解除しとくよ。」 「え〜、いつ設定しちゃったんだろ。画面見ながら寝落ちした時かなぁ。」 「いや寝ぼけて設定できるようなものじゃ…」 俺と緋美は、お父さんにだけに伝わるように、小さく首を横に振った。 それは緋美が自分の欲望を叶えるために、静夢から性的な知識を遠ざけようとして入力したプロンプトだ。 緋美の仕業だとバレれば静夢から嫌われるかも知れないし、せっかく再会できた父親にも、人間性を疑われることになる。それはさすがに可哀想。 お父さんは、静夢の暴走を目の当たりにしていたせいか、言いかけた言葉を飲み込むようにコクンと頷き、 「解除はしたけど、あんまりチャッピーに頼り過ぎるのもよくないよ。知りたいことは俺に聞いて。ねっ、父親として、静夢の役にも立ちたいし。」 そう言い直すと、静夢にスマホを返した。 「はーい、AI研究してるんだから、お父さんはAIより詳しいってことだもんね!頼りにしてます!」 お父さん、答え難い質問ガンガンされそうだな…

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