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第70話 静夢の正体は。
「そうなの?」
「マジで?!」
「正確には、私たち吸血一族の方がオリジナルなのよ。ルーマニアのご先祖様と交流のあった作家が、彼らをモチーフに物語を書いたのがきっかけで、血を糧に生きる種族がいることが広まったの。もちろん物語の方は脚色も多いのだけど、ご先祖様たちは私たち末裔より、物語の吸血鬼にもっと近かったと聞いているわ。」
そっちなんだ…!
「私たちの親世代は血統に拘っていたけれど、一族の長い歴史の中では、昼の子と結ばれたご先祖様もいたのよ。血はかなり薄まっていて、今しーちゃんに受け継がれているのは、血が好きなところと、日光に弱いことくらいじゃないかしらね。」
他にも山ほどありますけど…。
「死なないとか、寿命がすんごい長いとか、ないよね?」
「もちろん、普通に亡くなるわよ。昇みたいに、怪我や事故に遭わなくても、寿命は普通の人と変わらないわ。」
「あーよかった!僕は長生きなんてしたくないから。こーくんと生きてこーくんと死ねたらいい。ご先祖様が吸血鬼でもなんでもいいよ。あはは!」
「あんな有名な物語のモチーフだったなんて、凄いなとは思うけど、そうだね。静夢が笑ってくれてたら、俺もそれでいいかな。」
「こーくん♡」
「ふっ、ラブラブだな。静夢が幸せそうで良かったよ。光くん、ちょっとお転婆だけど…静夢をよろしくね。」
「は、はい。がんばります。」
「緋美は?まだ好きな人とかいないの?」
お父さん!それ聞かない方が……
「…いるけど、その人には他に好きな人がいて…」
「でも俺、今友達と旅行するのにハマってて。電車で日本全国、飛行機で海外に行くこともあってさ。旅してる時間はその人のこと忘れられるから、いいんだ。見守っていこうと思ってる。」
「そうか。甘えん坊で、静夢にベッタリって聞いてたけど、緋美には好きな人も、親友までいるんだな。旅に付き合ってくれる友達なんて貴重だから、大切にしなよ。」
「……うん。」
緋美が本気で言ってるのかわからなかったけれど、その旅が桃鉄の話だとか、友達というのが俺の弟で小6だとか、伝える必要はない。どちらにしても父親を安心させたい、緋美の優しさだから。本当に成長したな。
その一方で、静夢は店員を呼び出し、ミルクのお代わりを頼んで、氷で薄まっちゃうから次は氷入れないでください、紙ストロー苦手だからプラスチックにしていただれば助かりますと、丁寧にごちゃごちゃ言っている。
静夢は成長しないな。
「実は俺、この辺に住んでて。ずっと近くでお前たちのこと見守っていたんだ。そういう愛し方もあるんだよな。」
「えー!こんな近くに住んでたの?!バッタリ出くわしててもおかしくない距離!僕が昼夜逆転だったから会えなかっただけだねきっと。」
「そうそう。紅美と一緒に住む家も近くに借りるから、いつでも遊びに来て。家族としての時間、取り戻したいからさ。」
「はーいお父さん!お母様をよろしくお願いしますね!」
親子の再会を終え、お父さんとお母さんは、早速物件を見に行くという。緋美は桃鉄やらなきゃと俺の家に向かったので、俺と静夢だけで洋館に戻ることにした。
洋館に続く、昼間でも暗い森。
静夢はもう何の理由もつけず、もちろん俺も、夜目が効くのにと揶揄うこともなく、自然と手を繋いで歩いていた。
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