1 / 16
第1話 鬼電
「ううぅ!!かいとおぉぉ…っ!」
日曜の夜
深夜2時に鬼電してきた同期の第一声はそれだった。
「裕介?どしたの」
俺の名前は影山快翔、社会人5年目になる27歳の男だ。
そして、俺の名前を叫んできた男は、同期であり、俺の片想い相手・田沼裕介。
こんな時間にどうしたんだろ、と思いつつ
俺はついさっきまでやっていたPS5のソフトを一時停止して、コントローラーをテーブルに置くと
スマホを耳に当てながら問いかけた。
「てか、今何時だと思ってんの?夜泣きにも程があるよ」
すると、蕎麦をすするような酷い泣き声が耳に直撃した。
「だ、だっでえぇ…!!ぼぐまだ振られたんだよ~~…!!!」
それは確か1週間前にも聞いたことだった。
「また振られたの?てか1週間前に彼女に振られたって話してたのに、早くない?」
疑問に思い、そう尋ねると、裕介は声を引き攣らせながら言った。
「今回のは違うっていうか…っ、結局、お金だけ取られて…捨てられたんだ」
「は?金取られたって…まさか詐欺にあったとか?」
昔からマッチングアプリで女性にお金を騙し取られるとか
一般人を装ったホストと恋人関係になったあとに、ホストだと暴露し、そのまま客として店に通わせて金を搾り取る。とか
そんな手法はよくあるが、まさかそれに引っかかったのか?と
俺が聞き返すよりも早く、裕介が言葉を続けた。
「そんなんじゃないよ!その…うちの部署に、すごく美人で優しくて、スタイルも良い高橋歩美ちゃんって子いるじゃん」
「あー…そういえば、最近部署の男どもがめっちゃ群がってる子いたっけ」
「そういえば…って、あんな美人だよ?イケメンのくせして眼中にないの?」
「顔は関係ないでしょ。興味もないし知らなかっただけだって。……で、その子がなんだっけ?」
「その、最近歩美ちゃんとよく食事行ってて、その度に「財布忘れた」とか金欠だからって言われて…」
「なんだ、カモにされたって話?」
「そ、そういうんじゃないってば!」
「じゃあなに?」
「その…〝今度お礼するからお願い〟って上目遣いしてくるのが可愛くて…ついいつも奢ってただけで」
「ほら、カモじゃん。てか、振られたってどゆこと?付き合ってたの?」
「それが、この前会社帰りに居酒屋で一緒に飲んでたときに告白されて付き合い始めたんだ。それで今日もデートしてたんだけど、そのときに凄く怒らせちゃって…」
裕介曰く、つい数時間前まで高級寿司屋でデートをしていたという。
だが、食事の途中にこれからの話になり
その際に「特別な日はもちろん僕が出すから、そのとき以外は歩美ちゃんにも出して欲しくて…」と言い出したところ
彼女を激怒させてしまい、そのまま別れを告げられ帰ってしまったのだとか。
ともだちにシェアしよう!

