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第2話

「そりゃ、その……怜治さんが花言葉とか、花の育て方についてすごく分かりやすく教えてくれるからですよ!おかげで僕も最近、花にも興味が湧いてきちゃって!」 口から出まかせ……というわけではないけれど、これは半分が嘘で、半分が本当の理由だ。 言い訳をするように早口でまくし立てた僕の脳内では、もう一人の自分が大声で叫んでいた。 (本当は花じゃなくて、怜治さんの国宝級の顔面をタダで拝むために通い詰めてるなんて、口が裂けても言えね〜〜〜!!!) 「ふふっ、それはよかった」 怜治さんは悪戯が成功した子供のように、喉の奥で低く笑った。 けれど、すぐにその綺麗な切れ長の目をわずかに細め、ふっと重心をこちらに傾けてくる。 「でも…花に〝も〟興味を持ってくれたってことは……なにかそれ以外にも、ここに通う理由というか、興味を持ってくれた対象があるのかな?」 「へっ?!そ、それは……っ!!」 「ん?」 怜治さんはさらに距離を詰め、覗き込むように顔を近づけてきた。 180センチを超える彼の高い身長から見下ろされると、それだけでとてつもない圧迫感がある。 間近で見る彼の肌は透き通るように白く、ほんのりと花の香りがした。 限界だった。 これ以上ここにいたら、心臓が爆発して死んでしまう。 僕は思わず一歩、大きく後ずさった。 「と、とにかく、今日はもう帰りますね……!また明日、来ますから!!」 上ずった声で慌ただしく頭を下げると、僕は踵を返し、逃げるように店の自動ドアへと走った。 背中に怜治さんのクスクスという静かな笑い声が聞こえた気がしたけれど、振り返る余裕なんて僕には無かった。 チリン、とドアのベルが鳴り、外の冷たい夜風が頬を叩く。 「はぁーっ…!マジで心臓バクバクする……」 店から一歩出た瞬間、堪えていた大きなため息が口から漏れた。 胸に手を当てると、信じられない早さで鼓動が刻まれている。 (最後のあの距離感は反則だって……) あの深い夜の海のような瞳にじっと見つめられたら、自分がどうなってしまうのか。 想像するだけで耳の裏まで一気に熱くなり、僕は両手で自分の顔を覆った。 (もうちょっと、緊張せずにまともに会話できるようになりたいな…あんなにドギマギしてたら、マジで不審者だと思われちゃいそうだし……) 「無理だ…恥ずすぎる……なんで毎回毎回、あんなに緊張しちゃうんだろ…っ」 すっかり藍色に染まった夕闇の住宅街を歩きながら、僕はやり場のない小恥ずかしさに襲われ 自分の髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜた。

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