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声②

「なるほどな。……なんとなく、理解した」  俺の言葉を聞き、クスクスと楽しそうに笑う小鳥遊くん。  そんな彼の笑顔を見て、改めて感じたんだ。  ……コイツとずっと、一緒にいたいって。  でもその瞬間、あの日の母親の顔と言葉を思い出した。 『来ないで! こっちに、来ないでよ! それ以上、私達に近寄らないで! この……、化け物!!』  あっぶな! またしても俺は、何を勘違いしそうになっていたんだろう?  ……化け物の俺が、彼の側にいたいだなんて。  小鳥遊くんの指先が、再び俺の耳に触れる。 『ねぇ、結城くん。……なんでまた、ピアスの穴なんかあけたの?』  ファッションのためだと笑って誤魔化すことも、たぶん出来たと思う。  でも彼にだけは、嘘をつきたくない。そう思った。  だから俺はヘラヘラと笑いながらではあったけれど、素直にその質問に答えた。   「えー……? あはは。運命を変えるため、的な?」  彼の眉間に寄せられた、深いしわ。  そしてそれに驚く間もなく、彼はまったく予想外な言葉を口にした。 『は? 何、それ。くっだらな!』 「はぁ!? くだらないって、なんだよ!? お前にいったい、何が分か……」 『分かるよ! 全部、分かってる! ……だって僕も、同じだから』  その言葉の意味が分からず、無言のままただ彼の顔を凝視する。 『ねぇ、結城くん……』  彼が、俺の名前を呼ぶ。 「……なんだよ?」  仏頂面のまま、答える俺。すると彼はふぅと小さく息を吸い、ニッといたずらっぽく笑った。  明らかに険悪な雰囲気だったはずなのに、なんでそこで、そんな風に笑えるんだよ!?    唖然としながら、ただ彼の顔をじっと見つめる。  すると小鳥遊くんは、過去一の爆弾を投下した。 『君、気が付いてる? ……僕、さっきから、全然喋ってないんだけど』 「え……?」  まったく想像していなかった彼の言葉に、思わず息を呑む。  そんな俺を見つめたまま、彼はプッと噴き出して、そのまま腹を抱えて爆笑した。 『あはは! やっぱり君、全然気が付いてなかったんだね? 僕も君と同じ、能力者なんだってことに』  笑い過ぎたせいで目の端に浮かんだ涙を指先で拭い、彼は続けた。 「あ、勘違いしないでね? くだらないって言ったのは、君の悩みじゃないから」    その言葉は脳内ではなく、口で直接語られた。 「くだらないのは、ピアスなんかの力で、運命を変えようとしたことだよ。そんなことで運命は変わらないし、簡単に自分の体を傷つけるのは絶対に駄目! 分かった?」  唇をツンと尖らせたまま、鼻先に指を突き付けられた。  小鳥遊くんが、能力者……? まさか、そんなはずが……。  だけどその考えもあっさり読まれ、彼は笑いながら言った。……頭の中で。 『フフッ、驚かせてごめん。でも……。まさか君、この能力を持つのが、世界中で自分ただひとりだと思ってた?』  ニッと意地悪く、彼の口角が上がる。そしてその表情は、どことなく天野に似ているような気がした。 「ねぇ、結城くん。答え合わせをしよっか?」  楽しそうに笑ったまま両手のひらで俺の頬を包み込み、彼は額に額を押し当てた。  そして、その瞬間。小鳥遊くんの記憶と優しい声が、一気に頭の中に流れ込んできた。   ***  僕には生まれた時から、テレパシー能力があった。  そしてそれは僕だけじゃなく、母方の従兄弟の勝利にも。  というのも僕らの生まれた家系は、代々|そう《・・》だったから。……かなりの確率で、超能力を持つ人間が生まれてくるからだ。  だから過去にはその能力を利用して、祈祷や占いを生業としたご先祖様もいたらしい。  我が親族ながら、本当に面の皮が厚いよねぇ。  そんな家に生まれたものだから、うちには代々、能力の操作方法に関するマニュアルみたいなものまであるんだよ?  結城くん。今度君にも、見せてあげるね。きっと、役に立つと思うから。    言葉を発することが出来るようになる前から、勝利とはよくふたりで会話をしてた。  とはいえ勝利はその時のことを、もう覚えていないみたいだけれど。  素直な勝利は、思ったことがすぐに顔に出る。  そしてその性格は、他人の心の声が聞こえる能力との相性が最悪だった。  そのため僕は危機回避のため、校内ではなるべく彼の側にいないことにした。  そして心の鍵を閉じることで、他者の心の声を聞かないようにした。  だってわざとじゃないにしても、ちょっとズルしてるみたいで嫌だったし。    だけどアイツは、能力のコントロールが下手くそだった。いくら練習しても、びっくりするくらい上手くならないんだ。  でも同時に勝利は、本当に素直でいいやつで。……だから文化祭の係決めの時も、僕を庇おうとしてくれた。  その気持ちはとてもありがたかったけど、クラスのカースト最上位に君臨する勝利に庇ってもらえば、いらぬ反感を買いかねない。  そう思ったから、その申し出は丁重にお断りしたんだよね。  あぁ、ごめん。ちょっと話が、それてしまったね?  結城くんが僕らと同じ能力者なんじゃないかって思ったのは、そうだなぁ……。文化祭の係決めの時が、たぶん最初だったと思う。    それを確信したのは教室で居残りして、ふたりで看板にペンキを塗っていた時。  君が真っ赤なペンキを勝手に塗ったことにびっくりして、心の鍵が勝手に開いちゃって。  聞くつもりはなかったのに、そのせいで君の心の声が勝手に聞こえてきちゃったんだ。    あの時君は、僕の心の声を聞いた上で、やってくれたんだよね?  そういうところがほんと、見ていて心配になっちゃった。……器用なようでいて、君、本当に不器用だから。

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