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第3話 お礼のデート?

突然そんなことを言われて驚いた俺は、体を引いて答える。 「な、何言ってるんですか」 そう言って目を泳がせる俺を見て、彼はふふっと笑った。 「冗談ですよ。僕はただ、あなたと友達になりたいんです」 「え? 俺と友達にですか?」 「はい。なのでまずは今夜、食事にでも行きましょう」 彼の優しい笑顔のせいだろうか。さっきと変わらずデートに誘われている様に聞こえてしまう。 「それじゃあ僕、昼休憩終わっちゃうのでもう行きますね。十九時頃、お店の前で待ってます」 余分にあげた分のお金を俺に渡し、彼は店から出ていった。これは行くべきだろうか。いや、僕が要望を聞いたのだから、行くべきだろう。そう決意して俺は業務に戻った。 そして約束の時間。俺が店の外へ出ると、彼は既に来ていた。 「すみません。待たせちゃいましたかね」 「さっき来たばかりなので大丈夫ですよ」 彼は笑顔でそう言う。初めて会った時は少し怖いと思っていたけど、意外とよく笑うようだ。 「じゃあ、行きましょうか」 「どこに行くんですか?」 「ラーメンなんですけど、大丈夫ですか?」 「はい。ラーメンは好きです」 「よかったです。それじゃあ、行きましょうか」 そして俺達はラーメン屋へ向かう。ラーメン屋に入ると、彼は俺を席で待たせて、慣れた手つきで水をついで持ってくる。 「ここ、水セルフなので」 「すみません、ありがとうございます」 「いえ。ラーメン、どれにします?」 彼からメニューを受け取り、ざっと見てみる。 「う~ん...いろいろあるんですね...」 悩んでいる俺を見て、彼は言う。 「僕のおすすめのラーメンがあるんです」 彼はメニューをペラペラめくった後、指をさす。 「これ、とても美味しいんです。良かったら」 彼が指を指したのは特製豚骨ラーメンだった。 「これにします」 即決した俺を見て、彼はふふっと笑う。 「それじゃあ券、買ってきます」 「あっ、お金...」 彼は立ち上がり、財布を取り出そうとする俺の手を止めた。 「僕が払います。今日のこと、結構強引に決めちゃいましたし」 「いや、いいんですよ。これ、昼のお礼だし。むしろ俺が出すべきなんで、俺が出しますよ」 「僕が出したいんです。僕のわがまま、聞いてくれませんか?」 そう言って俺の目を見てくる。あまりにも真っ直ぐ見つめてくるので、俺は頷いてしまった。彼は券売機へ向かい、券を買って戻ってきた。 「あとは待つだけですね」 少し嬉しそうに彼はそう言う。 「あの、お名前なんていうんですか?」 友達になるのなら、まずは名前を聞くべきかと思いそう尋ねる。 「あっ、すみません! 僕が友達になりたいなんて言ったのに自己紹介もしないで...僕、矢野衛二(やの えいじ)って言います」 「矢野さん...ですか」 「衛二でいいですよ。友達だし」 「あっ、そうですね。衛二さん。...あ、俺は土岐奏人です!呼び方はなんでも大丈夫ですよ」 「奏人くん、よろしくね」 手を差し出しながらそういうので俺も手を差し出し握手をする。 「ここにはよく来るんですか?」 「はい。夜はよくここに来てます。ここのラーメン、すごく美味しいので。きっと奏人くんも気にいると思うよ」 「そうなんですね。ラーメン、楽しみです!」 そしてしばらく待つと、番号が呼ばれる。 「呼ばれましたね。行きましょう」 そしてラーメンをもって席に戻る。 「さぁ、食べてみてください」 衛二さんにそう言われて俺は箸を持つ。特製豚骨ラーメン。白いスープに麺が入り、チャーシューや卵が乗っかっている。とても美味しそうだ。俺は麺をひと口、ズーッと啜る。 「...美味い」 自然とそう出ていた。それを見て衛二さんも一口食べる。 「やっぱり美味しいな。ここのラーメンは」 「凄いですね。こんなとこにこんな美味いラーメン屋があったなんて...ずっとこの町に住んでるのに知らなかったです」 「僕もビックリしました。実は最近引っ越してきたばかりなんですけど、なんとなくラーメン食べたくてこの店入ったら、こんなに美味しいラーメンに巡り合えるなんて」 最近引っ越してきた。その事が気になって俺は聞く。 「最近引っ越してきたんですか?」 「はい。今年大学を卒業して就職したので、職場の近くに引っ越して来たんです」 「そうだったんですね。じゃあ家も職場もこの辺なんですね!」 「はい。奏人くんの家はこの辺なの?」 「あ、俺の家、きらくにの上なんです」 「そーなんですね!なんか上にあるって思ったら、奏人くんの家だったんだね」 「そうなんです」 ラーメンを食べながらそんな会話をしていると、ふと昼の出来後を思い出す。きらくにの話をしたからだろう。俺は衛二さんに疑問に思っていたことを聞く。 「そういえばお昼のあれ、どうやってやったんですか?」 衛二さんはその質問でラーメンを食べる手が一瞬止まるが、一口食べ飲み込んだ後に言う。 「...いや、僕もよくわかんないです。意外と素直だったみたいです。あのYouTuberたち」 「そうですか...」 なんとなく気まずい空気が流れてしまい、俺は咄嗟に質問する。 「ランチセットA、いつも頼んでくれますよね! あぁいうシンプルなサンドイッチが好きなんですか?」 「あ、まぁ、それもありますけど...」 衛二さんは俺の目を見て、ニコニコしながら言う。 「奏人くんのおすすめだから」 そういえば初めて来た時、おすすめを聞かれてランチセットAをおすすめした。 それにしても、そんな事サラッと言うなんて。俺が女だったら今頃惚れてしまっていただろう。 「そうですか...なんかありがとうございます」 「い~え」 その後、しばらく話してラーメンを食べ終え、店を出た。 「今日はありがとうございました」 「いえ、こちらこそ奢ってもらっちゃってすみません」 「いいんですよ。また食事行きましょう。今度は別のところに行ってみたいですし」 「あぁ...そうですね」 別のところ。もしかしたら昼もきらくに以外の所に行ってしまうかもしれない。なぜか不安になった俺はつい聞いてしまう。 「お昼も他のとこ行きたいとか思ったりするんですかね」 それを聞いた衛二さんはふふっと笑ってから答える。 「思わないですよ。お昼はきらくにでのんびりするのが好きですし。それに...」 そう言いかけて、俺の傍により、耳元で囁く。 「奏人くんに会いたいので」 その行動に痺れを切らした俺は、つい聞いてしまう。 「あの、衛二さんってよくタラシって言われません?」 それを聞いた衛二さんは、ふふっと笑う。 「そんな事、初めて言われました。僕、むしろ人に避けられるタイプなので」 確かにイケメンではあるものの、この鋭い目と目があったら誰でも距離をとってしまうと思う。本当はこんなによく笑う人なのに。 「あぁ...そうでしたか、なんかすみません。タラシなんて言っちゃって」 「いえ、いいんですよ。あ、そうだ!」 衛二さんはスマホを取り出す。 「連絡先、交換しません?」 「あぁ、そうですね!」 俺もスマホを取り出し、連絡先を交換する。 「これでいつでも連絡出来ますね。家まで送りましょうか?」 「あ、いえ。大丈夫です。では、また」 「はい、また」 衛二さんに手を振られ、振り返した俺は家へ帰る。 家に着いてスマホを確認すると、衛二さんから『よろしく』というスタンプが送られてきていたので俺もスタンプを返した。 次の日、俺はいつも通り接客をする。そしていつもの時間に衛二さんがやってくる。 「いらっしゃいませ」 「いらっしゃいました~」

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