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【8】ルームメイト兼…

 そうして今夜もまた、消灯の時間になった。  スタンドライトだけが灯る室内。同じベッドの中で、おれたちは向かい合っている。 「……なんか、あれだな」  ごほんと咳払いしながら藤倉が言った。 「ちゃんとした同衾(どうきん)って思うと、無性に照れるな」 「言い方……」 (そんでそういうこと言わないでよ。おれも照れる……)  というか、正直言えば指摘される前から照れている。駆け足の心拍が伝わっていないかと心配なほどだ。  ──ほんの数十分前、おれたちは恋人同士になった。  今目の前にいるのはおれの彼氏。そう思うと、暗闇の怖さもほとんど気にならないのはどうしてだろう。 「……柏木」 「なに?」 「キスしていい?」  ひときわ大きく心臓が跳ね上がる。一気に体温が上がっていくのがはっきりわかる。 「……うん」 「…………」  か細い声で答えたおれを、腰に回ってきた手がそっと抱き寄せた。 (うわ……)  今までにない近さで見つめ合う。  藤倉の顔は緊張していた。きっとおれも同じような顔をしているだろう。  さらに近づいてきた時、おれは目を閉じた。  闇に閉ざされた視界の中、唇の触れ合う感触だけをはっきり感じる。柔らかくて温かい。 (……すごい。この暗闇、今までで一番怖くない) (それどころか……幸せ)  こんなに幸福な暗闇があるなんて、生まれて初めて知ってしまった。    触れて、離れて。何度か繰り返して、終わってからも静かに余韻に浸っていると…… 「……やばい」  藤倉が吐息混じりの声をこぼす。 「勃つかも」 「えっっ」  一瞬で余韻が吹き飛んで、目を剝いた。 「えっ、あのっ……我慢できるんじゃ……!?」 (さ、さすがに交際初日でそこまでは……! そもそもここ寮だし……!) 「で、できるできる……大丈夫…………多分」 (多分!)  余裕のない笑みを浮かべて、藤倉はもう一度チュッと軽いキスをした。 「俺の我慢の限界が来るまでに、柏木には一人寝にも慣れてもらわなきゃな」 (つまり、ベッドを分ければ我慢できるってこと?) 「が、頑張る」  平穏な寮生活のために、精いっぱい努力しよう。  そう誓いながら大きくうなずいた。   ●END●

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