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第28話
side:翔
出会った場所も状況も最悪だったけれど、一目見た瞬間に恋に落ちた。
妹の旦那の兄だ というその人は、本当に、美しいという言葉が似合った。
一見、女性のような顔立ちで、それぞれのパーツが整っている。滅多にお目にかかれない「美人」だ。
全身ほっそりしていたが、半袖のシャツから見える腕は筋肉がついていて、おそらく見えない部分も相当鍛えているのは想像できた。
けれどその瞳はこんな時でも力強い意思を秘めて光を放ちながらも、少し寂しげだった。
外見の美しさだけでなく、俺はその瞳にやられてしまったのだ。
左手の薬指を確認して安堵する。よかった、独身だ。
「あの…相沢 智です…守の兄です。
あなたは?」
心地いい低音のハスキーボイス。
イケメンは声でも相手を殺せるな。
月並みな言葉だが 俺はもう、この相沢智という人に 心を奪われてしまった。
絶対落として俺のものにする。愛して愛されたい。
逃せば…もう、二度と恋はできないかもしれない…
狂おしい気持ちが膨れ上がるが、あえて彼の前ではクールに振る舞う。
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