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第1話

病院での俺のあだ名は「やぶ医者」。 目元を隠すほど伸ばした髪はぼさぼさ、髭も生やしっぱなしでぼさぼさ、白衣を羽織らず、Tシャツジーンズにサンダルをつっかけ、病院に迷いこんだ浮浪者のようにうろうろしているから。 気が向いたときに仕事をして、それ以外、病院を徘徊しているのは物色のため。 ナニのってマッチョナースのだ。 俺が働くこの病院にはマッチョナースだらけ。 「筋肉はすべてを解決する!故に筋肉は病気も直す!」とオーナーが豪語して男の看護師しか雇わないらしい。 といっても彼らのほとんどは最初、ノーマッチョ。 オーナーが経営してるジムでオーナーが手取り足取り指南するのに鍛えられ(業務の一貫だから給料がでる)三ヶ月くらいでマッチョナースにしあがる。 ボディービルダーのオーナーの単なる趣味でしかないとはいえ、患者やその家族に好評だし、病院の売りあげは右肩上がりで、マッチョナース病院をもうひとつ建てようと計画がすすんでいるほど。 まあ、なににしろ制服のボタンを弾きとばしそうに筋肉質な男が大好物の俺にとって、この職場は天国。 目についた二三人に声をかけ、やり部屋の地下倉庫でスカートが破けそうなミニスカナースになってもらい、天性の助平な手で「ああん♡だめぇ♡先生いぃ♡」と泣かせてヨがられ「よいではないかよいではないか♡」とご満悦な日々を送っていたのだが。 その日、オーナー命令(いい加減クビにするぞ!と脅されて)で渋々仕事をしていたら、新しくはいったマッチョナースを紹介された。 新人マッチョナース、桶谷くんははじめから制服がぱっつんぱっつんで、むんむんと熱気を放つような張りつめた体をしながらも、凛とした佇まいをしてクールな印象。 俺よりずっと礼儀正しく節度があり、医学知識も並みの医者よりあって、細かい配慮ができ気転も利くが、感情表現が乏しくて必要最低限にしか話さず、なにより一切、笑わない。 そのせいで医者や看護師、患者から快く思われていないようなれど「それがいいんじゃないか・・・!」と俺は悶々。 こういうふだん、つっけんどんなのを、俺の天性の助平な手でもって「あん♡あん♡せんせえぇ♡もっとぉ♡もっと、お注射してええぇ♡」とはっちゃけさせるのが、たまらんというもの。 「それでいいです・・!どうか、萎えてください・・!」とかわいげがないのが、かわいくて、でも表情にはださず「ほらほら俺の指マンに対抗してよ、数えきれない男を鳴かせてきた指マンで萎えたままでいてよ」と尻の奥のしこりを押し潰し、しつこく擦りあげる。 「んんっ、んんっ、んんんくぅ♡せんせっ、先生ぃ、だめぇ、だめですっ、そこ・・・! 俺、俺だってぇ、萎えた、ままでぇ、いたい、ですぅ・・!はっ、はっ、はあぁ♡萎えた、ままでぇ、いなくちゃ・・! んあああぁ♡やっ、やぁ、だめっ、だめですよおぉ♡そんな、いっぱぁ、指でぇ♡ ふぐぅ♡んんぐっ♡くうっ♡くうううあぁ♡やめぇ、やめてっ、せんせえぇ♡俺っ、俺ぇ、萎えた、ままじゃ、ないとっ・・!」 お漏らしどばどば性器を透け透けにしてパンティーを盛りあげ、スカートが破けそうに汗蒸す太ももを張りつめさせ「だめっ、だめぇ、先生いぃ♡やめてっ、やめてくれおおぉ♡っっっっあぁ♡」ととどこおりなく絶頂へ。 「男に触られると萎えるんで」と澄まし顔だったマッチョナースをぎゃふんといわせたようで満足感を覚えながら、切羽詰まったように「萎えたままでいたい!」と頑なに拒もうとするのに「もっとだ、もっと見てぇ・・」と加虐心を疼かせてしまい。 仕事中に倒れて友人が院長を務める病院に入院することに。 検査しても、とくに病気は見つからなかったし、自分としても平気に思えたが「このままだと過労死するぞ」と腐れ縁の友人、タケオに鬼のような顔で脅されたのだ。 「いやいや医者だからって、患者に入院を強制できないでしょ、警察じゃあるまいし、ていうか俺、罪を犯したわけじゃないし」 「ふんっ、じゃあ好きにしたらいい。 ただし入院をしなかったら、お前とは絶交だ」 しかたなく会社に報告すると、怒るどころか「稼ぎ頭のきみになにかあっては困る!」とむしろ入院することを歓迎してくれ、惜しみなく援助をしてくれると。 その言葉に甘えることにし、病院で一等、高額な部屋をとり、悠々自適に体を休めることに。 といってベッドに寝そべってぼうっとしていると、かえって病気になりそうなほど落ちつかないでストレスが蓄積。 俺が倒れた原因は過労だけでなく、仕事終わりにオールナイトで遊んでいたせいもある。 残業で疲労困憊なのにかまわずクラブで踊り狂い、次々と寄ってくる男どもとトイレで、路地裏で、カラオケで、空きテナントで、ホテルで複数人で、ところまかわず出勤間近までセックス三昧。 タケオが怒るのも当然の不健康な生活ぶりなれど、男を抱いて抱いて抱きまくらないことには、一日中、めまぐるしく忙しくしないことには、虚無に押しつぶされそうで。 今、まさに暇な分、余計なことを考えて憂鬱になるは、寝ようものなら悪夢にうなされるは。 いやというほど原因に心当たりはあれど、まあ、単に俺がかなりの好色だから、欲求不満になってもいるのだろう。 なにせ入院をするまで、一晩も欠かさず男たちと肉欲に溺れていたのだから。 わざわざ探したり口説いたりせずとも、すこし触れただけで相手が発情して自ら股を開くのが、おもしろくて、抜けだせなかったせいもある。 インポに悩むノンケの男だろうと「お前ホモなの?まじむりっ!」と侮蔑する糞野郎だろうと俺の手にかかれば「ああん♡ちんぽ、ちょおだいっ♡奥まで、ずぽずぽっ♡ぐちゃぐちゃ♡してええぇ♡♡」と恥もくそもなく、醜態をさらしておねだりするし。 おかげでクラブに顔をだしたら、すっかりめろめろのやつと、新規のやつが放っておいてくれず、全員を相手にして毎晩、乱交パーティーする羽目に。 精力を維持するため、すっぽんの力などを(あくまで合法的なものを)借りて一晩で百人切りもざらだったに、仕事の多忙さもあってそれだけ体を酷使したら、そりゃあぶっ倒れるというもの。 タケオに「絶交」をちらつかせ、脅されて、すこしは自分を省みて「たしかに、この乱れた生活をつづけていたら死んでたかもな」と痛感したが、セックス依存症的体質が、急に改善されるわけがない。 精力剤を飲みまくってセックスに埋没し寝ない日々を過ごすのに慣れてしまっては、入院しても目が冴えまくってろくに休めないし、そうして起きている時間が長いほど、セックス以外したいことが思いつかず「ほんと俺って空っぽの人間なんだな」と哲学をして途方に暮れてしまうし。 「タケオや病院のスタッフの目を盗んでエッチできないかな・・」と本気で検討しはじめたところ「ちわーすっ!朝の検温っす!」とドアのノック音と溌剌とした声が耳を打った。 びくりとしながら「どうぞ・・・」を返せば「いやー!担当の蓮見さんが、訳あって、しばらくお休みなんで急遽、俺が代わりをすることになったんすよー!」とちゃらい口調の男の看護師が奥歯まで覗かせて笑いながら入室。 「俺はシマバラヨースケっていいます! 退院するまでお世話をすることになると思うんでよろしくっす! 困ったことや頼みたいことがあったら、気がねなくおっしゃってくださいね!」 おそらく二十代前半、ユニフォームが破けそうなほど、ボリュームのある筋肉質な体をして、顔はけっこう凛々しい男前、ちょっと暑苦しく阿呆っぽくありつつ、笑う犬のように惜しみなく愛嬌をふりまいている。 見た目からして「か、かわいい・・!」と一目惚れするレベルで、おまけに「この病室、ぼったくりなんすよ?でも、あんた見栄っぱりな社長さんに見えませんね!」と育ちのわるさを覗かせてくるのも、大変よろしい。 男に飢えている身としては、すぐにでも腕を引っぱってベッドに押し倒したいところだが「いや、待て!」と直感的な危機感知を。 俺の性生活の荒れっぷりを知っているタケオが、考えなしに飢えた獣に極上の餌を吊りさげてみせるわけがない。 「こりゃ、裏があるな」と考えて「男の看護師いたんだ?はじめて見たよ」と愛想笑いを浮かべ、探りをいれることに。 「俺と院長は長いつきあいの友人だから、用がなくても病院にきてたりするけど、これまで、きみを見かけたことないなあ・・新人さんなの?」 「あ、じつは俺、院長の甥っ子なんす!」 「そうなんだ」と驚いたふりをしつつ「やっぱりなー!」と胸のうちで嘆いた。 人に愛されて育ったオーラーを眩いほど放つヨースケは、きっとタケオの秘蔵子のような甥っ子なのだろう。 「絶交」で脅したうえ「手をだしたら分かっているな?」とさらに牽制しているわけで、相かわらずの策士ぶりながら、ヨースケの顔を見ると「どこまで鬼なんだ!タケオ!」と憎たらしいったらない。 複雑な心境をもて余す俺にかまわないで、ヨースケは見えない尻尾をふりつづけ、ぺちゃくちゃとおしゃべりを。 「じつは俺、かなりの問題児で、どこの病院でも揉めて追いだされたんすよねー。 看護師として自分のよくないところ、分かってはいるけど、どうしても直せなくてー。 叔父さんは俺が身内なのもあって、大目に見てくれるんすけど、もう辞めたくないし、あんま迷惑かけたくないから、今は問題起こさないよう気をつけてるんすよー」 最後の一言で無自覚に釘を刺してくるのが、ぜひ問題を起こしたい俺には耳が痛いところ。 といって諦めきれず、単純に好奇心もあって、病院のスタッフにヨースケについて聞きまわって情報収集。 「かなりの問題児」と自認していたに、どれほどの不良看護師かと思いきや、婦長曰く「いやーむしろ、いい子すぎるのよー」とのこと。 「あの子、担当する患者さんに肩いれしちゃうのよね。 看護師は人手不足だし、業務が多忙だし、受け持つ一人一人の患者にそう手間や時間をかけてケアができなくて、割りきって仕事しないことには、やってけない。 でも、あの子は寂しがったり痛がったり駄々をこねる患者を放っておけないのよ。 長時間、話に耳をかたむけちゃうし、すぐに症状をおさえる薬をあげちゃうし、無理難題なわがままにもつきあっちゃう。 そんなことしていたら業務が滞って、医者に迷惑がかかったり、ほかのスタッフに皺寄せがきたり、贔屓だってほかの患者のクレームがきたり、トラブルが多発して収集できなくなって、だから追いだされるわけ。 まあ、うちはスタッフが十分に足りて、院長の方針で余裕をもってケアに当たれているから、なるべく、あの子がさせたいようにして、口だししないけど。 べつに院長の甥っ子だからって特別視したり甘やかしてないわよ? なにかと揉め事を起こす不良患者を、あの子が担当するようになったら面倒が減って、実際、助かっているし」 「俺も不良患者なのか」と思ったのはさておき、話を聞けば聞くほど、惹かれてしまうから困ったもの。 噂どおり人情派の看護師で、一人部屋で所在なくする俺にしょっちゅう声をかけてくれ「暇すぎて逆に死ぬ」と愚痴ったら自分の趣味のボードゲームを持ってきて遊び相手になってくれた。 仕事をする以外、毎晩、とっかえひっかえに男を抱くことにしか情熱を捧げられず、とくに趣味というものがなかった俺には、アナログな遊戯、ボードゲームが新鮮で物珍しいものに思えて、有意義な暇潰しが。 ボードゲームで遊ぶことを通じて、ヨースケの人となりを、もっと知ることができたし。 叔父であるタケオを尊敬して看護師になったこと、基本的には健全ないい子なれど、がっつり体育会系の思考をして少々、粗野な一面があること、高校からラグビーをして、今もアマチュアでプレイをしているから人一倍の筋肉量を誇っていること、病院では力仕事要員として重宝され、女の看護師や患者に頼りにされモテていること。 あけっぴろげな陽キャだから、倒れた一因、夜な夜な男とエッチして遊びまくってたことを打ち明けても「あー分かる!なんか男にモテそうっすもん!」と無邪気な反応。 ただ、昔はやんちゃしていた名残か「てことは、いっぱいちんぽ見てきたんすよね!変わったちんぽとかあったんすか!」と無神経に舐めた口を叩いてくるのが、俺の息子に響く。 おまけにだ「俺も特定の相手、つくれないんすよねー」と下半身がばがば宣言をされた日にはもう。 「女の子に好きって寄りかかられると、すぐエッチしちゃって自分で止められないんすよー。 高校のころ、彼女いたけど、ほかの女の子にアプローチされて断れなくて、やっちゃったら、えらい騒ぎになっちゃってー。 高校を退学させられそうになったほど、痛い目にあったんで、それから恋人つくってないっすー。 さすがに叔父さんの病院でやらかしてはないっすよー? まあ、でも、たまに色目を使われると心が揺らいじゃって・・・」 最後の砦のような叔父、タケオに見放される危険があっても、肉欲に惑わされて悩ましくため息をつくヨースケのエロいことエロいこと。 こちらは試し読みになります。 本編は挿絵つきの電子書籍を各サイトで販売中。 詳細はブログにて↓ https://fujossy.jp/notes/39011

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