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夢から覚めるまで

 たった二人で囲む食卓。父は出張、母は夜勤で帰ってこない。  目の前では、ここ数年でずいぶんと身長を伸ばした弟の忍(しのぶ)が、座ってちまちまと食事を取っている。俺の様子を横目でいつも窺っていて、言いたいことがあるような顔で何も言ってこない。  忍は小6から始めたサッカーが中学で開花し、高校は推薦で県一番の強豪校に入った。日々の部活の疲れからか、俺とはあまりコミュニケーションを取らなくなった。 「おい」  吐き捨てるように言い放てば、忍はビクリと肩を揺らして俺を見た。じっと俺を見てはいるが、何を考えているのかは分からない。 「なに、大和(やまと)」 「なにじゃねーよ。ちらちらうっとうしいんだよ。見んな」 「……ごめん」 「はぁ……なんなんだよ」    下を向いて小さくなった忍に無性にイラついて、米が残った茶碗をドンと机に置いた。 「俺レポートやるから。片づけやっとけよ」 「……うん。頑張って」  忍は言いつけを守るように、俺を見ないままぼそりと答えた。その様子に舌打ちをして、お茶を一気飲みして立ち上がる。  前はこんなんじゃなかった。もっと普通に喋って、普通に笑って。変わってしまったこいつに苛立ちが募る。まるで、俺の知らない世界で生き始めたみたいな。  いつから、こんなことになってしまったんだったか。  自室で大学のレポートをするためパソコンを起動し、ブラウザを開く。 『弟 兄離れ』 『兄弟仲 改善』 『近親相姦 夢』  直近の検索履歴は、恥ずかしくて死んでも人に見せられたものではない。あいつの態度が気になるたびに検索しては、見古したサイトを開く気にもなれずため息を吐いた。  パソコンを開いてすぐなのに、強烈な眠気に襲われてベッドになだれ込んだ。最近はこんな日ばっかりだ。たぶん、寝るたびに変な夢を見るから寝不足になっているんだろう。  突然変わったあいつにも、寂しくなってあんな夢を見る自分にも嫌気がさす。  一緒にゲームして、一緒に風呂入って、一緒に寝て……。昔を思い出して、切なくなって、眠気に任せて目を閉じた。 ―――――  パンッ、パンッ、パンッ、パンッ……  ぼんやりと動き出した思考の遠くで、一定のリズムが刻まれている。お尻に衝撃が加わるごとに重たい痺れが何度も繰り返されている。  また、この夢だ。 「……ッお゛、ほぉ、お゛、お゛」 「はぁッ、声、おっきくなったね。ッは、ちょっと、起きちゃった、かなッ」  昔を思い出すような、忍の柔らかい口調。かすむ目で下腹部を見れば、手で俺の膝裏を押さえつけ、上がったお尻に杭のように腰を打ち付ける忍の姿。  覚醒してきた頭で一発くらう度に、衝撃と快感がどんどん大きくなっていく。 「きもっ、ち……お゛ッ、ぎも、ぢ、きもぢぃ」 「はッ、はッ、かわい、エッロ」 「ぐ、っる……きもぢぃのッ、ぐるぅぅ………ッ」 「イけ、弟チンポで、イけイけイけ……」  追い打ちをかけるように、より一層強く、深くえぐってくる。頭に昇った熱が、ずっとそこにあってどこにも発散できないままグツグツと煮えたぎっている。 「あ゛ぁ゛!!イ゛ぐイ゛ぐ!!しのぶのッ、ヂンポぉ、イ゛ッ……グ………ほ、ぉ゛……」  力いっぱい忍の腕を握りしめ、ガクガクと全身を激しく痙攣させた。自分の尻穴がぎゅうぎゅうと忍を締め付けて、それがまた苦しいほどの快感になる。 「っく……搾り取るの、ッ……上手になったね」 「う……うぁ゛……ぁ……?」 「上手、さすがお兄ちゃんだね」  涙とよだれでぐしゃぐしゃになった俺の頬を、忍が優しく撫でた。   「きも、ちぃ……しのぶ……しの、ぶ……すき」 「……うん。分かってるよ。俺が卒業するまで待っててね。そしたら、全部、全部捨てて……」 「……ん」  忍は、へらりと笑った俺を抱きしめ、耳元に唇を寄せた。 「それまでは、夢の中だけで愛し合おうね。……好きだよ、大和」  その温もりに包まれて、瞳を閉じた。  この夢を見る時はいつも、二度と目が覚めなくてもいいと思えるほど幸せだった。   『あんたたち……距離が近いんじゃない……?ちょっと、おかしいわよ……』  翌朝、ずいぶん昔に聞いた母の言葉が脳裏に響いて、俺は一人、目を覚ました。  そして今日も、見た夢をできる限り思い出したくて、けだるい身体で二度寝に耽った。

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