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宵闇の向こう側…35
莉音side
母が死んだ…最後はとても安らかな表情だった。
今まで女手1つで俺を育ててくれた母は俺の自慢だった
母の葬儀が終わり長いこと開けていた保科邸へ戻ると屋敷の様子が何かおかしい
「桂さん。長いことお暇をいただきありがとうございました」
「おかえりなさい。もう大丈夫なの?」
「ええ。母はやっとゆっくり休めるのですから」
「不謹慎だけれど戻ってきてくれて良かった。今男手が足りなくて…」
「何かあったのですか?あんなにいたのに…」
なずな様をイヤらしい目で見ていた男達の姿が誰一人見えない…
「それが私もよくわからないの。先日旦那様が私たちが帰宅した後に急遽お戻りになったのだけれどその翌日私たちがやってきた時にはすでに皆姿がなかった。同じ日旦那様はなずな様を連れ出した。もうお戻りになることはないと旦那様から伺っているわ。出掛けられたときのなずな様の顔色がすぐれなかったから心配しているけれど…旦那様は何もおっしゃらないまま海外へ戻られた」
誰に聞いても同じ答えが帰ってくる…なずな様…何があったのですか?…
もぬけの殻になったなずな様のための部屋を見渡しても何も見つからない…
旦那様に連絡を取るととても苦しそうにしていた
「なずなに…裏切られた…」
「それは何かの間違いでは?」
「たった一週間家を空けただけなのに…なずなは…他の男に体を開きあろうことか無理矢理ではなく自ら求め楽しんでいた…しかも一人じゃない。そこにいたすべての男を誘惑していた…そしてその映像を俺に当て付けのように送りつけてきた…なずながそんな奴だなんて思わなかった…やはり風俗上がりの者を手に入れたのは間違いだった。俺はもう誰も愛さない」
「お言葉ですが旦那様。なずな様がそんなことするような人だとお思いですか?」
「それが事実だから…」
あり得ない…絶対何かある…なずな様はそんな人間ではない。そんな人間ならば俺はすぐ誘惑されていたはずだ。でもしなかった…旦那様に明らかに恋慕していた…それは間違いない…だってあんなに他の奴に嫌悪感をお持ちだったのだから
「旦那様。私が言うのもなんですがなずな様はそんな人ではありません。なずな様は他の使用人に嫌悪感を抱いていました。ご存じですよね?」
「しかし…」
「もういいです。私が自ら調べます。必ず何かあるはずです。旦那様。なずな様の話聞きましたか?一方的に攻めませんでしたか?なずな様はどこですか?」
旦那様から連絡先を無理矢理聞き出しすぐにかけると沈んだ声でなずな様が電話に出た
自分が悪いとしか言わないなずな様に一方的に電話は切られその後繋がらなかった
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