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第81話

「お前って、ホント分かりにくいよな…」 「……」 「ま、いいけど…ふぅスッキリした」 私服に着替えてサクヤはシャワー個室から出てくる… 「……」 湯上がり美人な風体で… 髪の毛をくくり直すその姿に見惚れてしまうみずき… 「じゃ帰ろう、先輩たちに捕まりたくないし…」 サクヤはマイペースにみずきを促す。 なんとか頷き返して… 周りを気にしながら歩くサクヤのすぐ斜め後ろをついて歩くみずき… 「……お前は、」 不意に聞きたいことが思い浮かんで口にだすが… 「ん?」 振り向いてちいさく首を傾げ聞き返すサクヤ… 「…いや…」 見られるとまた緊張して話せなくなるみずき… その瞳から逃げてしまう。 「んだよ、聞きたいことがあるなら言えよなっ!もどかしい奴だな!」 サクヤはもぅ!と怒る… 「…すまない」 反射的に謝るみずき。 「はぁ…で、何?」 その様子を見て溜め息が零れるサクヤ… もう一度聞き直す。 「お前は…撮影後に誘われるのは、嫌なんだよな…」 今度はちゃんと言葉にする。 「は?いきなり何だよ…」 「……」 「つーか、誰だって嫌だろ?撮影後は疲れてるし、お前だって嫌だろ?」 逆に聞かれるみずき… 「あぁ…」 仕事以外は考えられない… そう思わない性優も中にはいるが… 「何?オレとやりてーの?」 遠まわしに誘ってんのか?と聞いてみるサクヤ… 「…、いや…違う」 お前も身体目的?というような目で見られ、とっさに首を振る… 「だよな、お前はオレにキョーミないみたいだし…」 「……」 内心こんなに気になる存在だというのに… サクヤからはなぜかそう思われている… 「お前は変わってるよな…」 「……」 そしてサクヤからは変な人と思われているのだ… 「行こうぜ…」 「あぁ…」 「…結局何がしたかったんだか」 「……噂が」 言うのを躊躇ったが…サクヤの気持ちを確かめたくて呟いてしまう。 「……いつでも誰とでもヤれるっていうアレ?」 サクヤは別段怒った様子もなく、さらっと答える… 「……」 「間違ってはねぇよな…実際そうなんだし…」 視線を斜めに投げてあきらめたように呟くサクヤ… 「……」 その様子を見つめてしまうみずき… 「軽蔑するだろ?」 ふと顔を上げ、深緑の綺麗な瞳が自分を覗きこんで、視線が重なる… 「……」 ドキッとして視線をそらしてしまうみずき… 「オレも軽蔑するよ、こんな自分…」 その行動を見て、薄く微笑み、そんなことを呟く… 「……」 「でも、これがBOUSでのオレだから…」 やはり投げやりな雰囲気で続けるサクヤ… 「……悔しくないのか」 つい聞いてしまう。 BOUSの面々に好き放題言われて…好きに遊ばれて… 「そりゃいい気はしないけど…本気になられるよりいいし、こんな人間、誰も本気で好きになんかならねぇだろ?」 尻軽やセックスマシーンなどと言われている自分なんか… 「……」 「束縛されんの嫌だから…丁度いい」 本心なのか強がりなのか…表情はあまり変わらずポツリと言う。 「…サクヤ」 なんだか寂しげに見えるサクヤ… つい名前を呼んでしまう。 「サンキュ、ここまででいいよ後はタクシーで帰るから…」 サクヤは気分を変え、BOUSを出た所で止まってみずきに言う。 「……」 まだ別れたくないのが本音だが… そんなことは言えない… 「お前も、オレなんかに関わってたら悪い噂流されるぜ!じゃな…」 手を振って、くるっと向きを変えあっさり歩きだそうとするサクヤ… 「……」 そのまま行こうとするサクヤを、とっさに腕を引いて止めてしまうみずき… 「…っ!なに?」 驚くサクヤだが… 「……気をつけて、」 みずきはぽつりとそれだけ伝えて…サクヤの手を離す。 「…ふ、人がいいよな…お前って、こんなオレにまで気ぃ遣ってさ…」 サクヤは拍子抜けして、つい笑ってしまう。 「……」 「ホント変わってる…」 サクヤは不意にみずきの首に両腕を回して…少し背伸びして… 優しく口づけしてくる。 「っ!」 突然の行動に… びっくりして固まるみずき… 「…お前には嫌がらせにしかならないか」 くすっと笑って続ける。 「オレ、感謝の仕方…わかんねーんだ、じゃ…」 サクヤは手をひらっと振って…そのまま駅まで歩いていった。 サクヤの姿が見えなくなるまで…その場を動くことができなくなってしまうみずき… サクヤからのキス… サクヤが触れてくれた場所を確かめるように触れるみずき… 感謝の仕方… サクヤは礼のつもりでキスしただけ… 俺だからしたわけじゃない… 分かっているのに… こころの中で喜んでしまう愚かな自分… 望みはないのに…近くにいたいと願ってしまう自分… 届かない想いだと分かっているのに…諦め切れない… 自分の滑稽さに堪らなくなる。 あきらめなくては… 本気になられたくないと、サクヤも言っていた… だから…諦めるしかない… けれど…諦めきれない想いが…奥底でもがいている。 本気で好きになってしまったから… 「……サクヤ」 近づけば近づくほど苦しい… しかし、存在を無視することは出来ない… はじめて味わう苦しい気持ちで… 途方に暮れてしまうみずきだった……。 番外編《届かぬ想い》終。

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