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──僕? 何なんだ? 「ここの市立図書館って大きくて充実してるからわざわざ通っていたんだよ。そうしたら徹を見つけた。クラスメートと勉強会でもしてたのかな? 中心にいてキラキラしてた君は目を惹くし、興味を持った。でもおかしくてたまらなかった。だって、誰も気づいていないんだ。君が“そういう”人間だってこと。同類にしか気付けない」 細くて長い指が俺の輪郭をなぞる。冷たい指先にぞくりとした。こんな和は知らない。目の前にいるコイツは誰だ? 「通う度に君を見つけては嬉しくてたまらなかった。皆が知らない君を一人だけ知っているような優越感は最高だったよ。そのうち手に入れたくなってきた。でも声をかけてただ仲良くなるだけじゃあ満足できない。本当の早坂徹という人間を手に入れなきゃあってな。転校してきた理由は君だよ。まさか同じクラスになるとは思っていなかったけれど」 何か悪夢を見ているようだけれど、どこか興奮している自分もいて、忙しい感情で気分が悪い。 「操作される側を演じるのはなかなかに苦労したよ。ヤンキー口調って言うの? 僕、ああいうの苦手でさぁ」 「……っ、」 何かがつっかえたような胸元を何度も叩くと、和はまた楽しそうに笑みを浮かべた。 「あはは。びっくりして何も言えない? だって元々は僕のこと操作して支配して遊ぼうとしていたしな。課題だって財布だって君がやったことくらい分かってたよ。そんなことをさせてしまうくらいに僕が君を操作できていることがたまらなく快感だった。けど君が僕を操作したい理由も変わったし、僕だって君を騙していたわけだから責めやしないよ。おあいこだ」 俺の目の前で座り込み、和は自分で噛んで血の滲んだ唇を舐めた。 「僕たちここまで大きく他人を支配できたんだ。俺を真っ先に疑う彼女も、そうさせたのだって僕と君だよ。僕たち二人ならば、もっと楽しいことが始められると思う。でもその前に、君のその優等生キャラで僕の罪をきちんと無かったことにしてよ。……それとも意外に脆い不良の和くんの方が君は好きだった?」   散々好き勝手言っておいて最後にそう言った和は、あの日一緒に寝た時に見た可愛い和と何ら変わりはなかった。 「今の和も好きだよ。お前に操作されていたにしろ、俺だってこれだけのことができるくらいにお前のこと欲しくなったんだ。似たもの同士、仲良くやれるよ」 「じゃあさっきよりももっと濃いキスをして。あんなんじゃあ足りないよ」 世界が反転するとは、こういう感じなのだろうか。まさか俺が操作され、支配されるだなんて。 「でもいいや。和は手に入ったし、和だから許してあげるよ」 一人称は僕なんだ? と聞けば、この見た目だしギャップ萌えでしょ? と、和という言葉が似合う柔らかさで笑った。 END

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