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第56話
大分遊んだしそろそろ帰ろうかと来た道を歩く。
それにしても、兎のぬいぐるみを抱く希一は目立つ。
すれ違う男が小声で可愛いと呟いたのを陽介は聞き逃さなかった。
これ、一人で歩かせたら危ないな。
希一の父親が外出に関して過保護なのが分かる。
それに方向音痴で変な奴に道でも聞いてどこかに連れ込まれそうだし。
「希一手、ちゃんと繋いどけ。」
「うん、陽介。
今日はありがとう楽しかった。」
「おう、またどっか行こうな。」
そう言ったら嬉しそうにうんと頷いて今度はどこに行こうかと既に次の話をしながら帰る。
楽しそうに話す彼を見て陽介はずっとこの生活が続けばいいのにと思った。
こんなに人と一緒に居て楽しいと感じたことはなかった。
それが彼の人柄なんだろう……
寮に着くとラウンジのソファに碧がいた。
「あれ、碧さん?」
「希一‼
き、奇遇だな出かけてたのか?」
「はい、動物園に行ってきました。」
碧の奇遇だなと言う言葉を聞いて隣にいた雫はずっと待ってたくせにとクスクス笑っていた。
そして碧は希一の抱いている兎に目をやる。
「そのぬいぐるみは動物園で買ったのか?」
「ああ、いいえ
陽介がゲームセンターで取ってくれました。
彼凄いんですよ‼簡単に取ってて‼
俺なんか全然ダメでした。」
「そ、そうか……」
楽しそうに話す彼の兎を抱く姿に頬を染める。
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