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第2話

トド松が家を離れてから1週間。おそ松兄さんはあのままだが、普通の日常を送っていた。 『一松兄さん、見て見て!あははー!!』 十四松が「触手〜!」と言いながら腕をぐにゃぐにゃさせている。 僕は「そうだね。」なんて、適当なことを返して、膝の上の猫を撫でた。猫の毛は、秋頃には丁度いい暖かさだ。 でも、開いた窓からそよそよと流れる風は僕に似合わない程爽やかで、少し気持ちが悪かった。 『兄さん、どこ行くんすか!?』 玄関からさっき隣にいたはずの十四松の大きい声がする。きっと僕がぼーっとしてる間に移動したんだろう。 兄さん。と言うと、おそ松兄さんはずっと2階から出てこないから、クソ松のことだ。 僕は十四松のその言葉だけでドキリとした。 『少し気分転換に、散歩だ。十四松も行くか?』 『行くー!!野球するー!!』 『野球はしないぞ、十四松』 散歩、十四松と一緒。……良かった。 僕はほっと胸をなでおろした。 こんなことが今週で3回目だ。心臓に悪い。 どうしてそんなに焦っているかって? 最近になってわかった気持ちがあるからだ。はっきり言おう。 《僕は、カラ松が好きだ。》 兄弟としてじゃない。 当たり前だが、本人には気持ちを伝えていない。 伝えるつもりもない。僕は小心者だから、気持ち悪がられて嫌われるのが怖かった。きっと苦しさで死んでしまうかもしれない。でも、言えたらどんなに楽だろうと思う時もある。毎日毎日辛くて苦しくて、死にそうだ。男同士、しかも顔の同じ兄弟?そんなの言えない。言えないから俺は今まであいつを嫌いな演技をしていた。叶う可能性が低いなら、最初から望まなければいいと考えたから。 窓から散歩に出かけるカラ松と十四松を眺める。 十四松は俺がカラ松を留めておきたい理由がわかっていると思う。臆病な僕の代わりにあいつをつなぎ止めてくれている。だから俺にカラ松のことは聞いてこないし、知っていたとしても誰にも言ってないようだ。 ぼーっと眺めていると、二人の姿がなくなっていった。 トド松が出ていったあの日から、毎日こんな感じでひやひやしながら生活している。 カラ松がいつ出ていくか分からない状況に僕はは、かなり精神を削られていた。

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