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苦い過去 20
「雨、どしゃ降りですね。」
「あぁ、なんか明日まで止みそうにねーよな。」
「…………出来ればその方が有難いんですけど……」
「なに?今、何か言ったか?」
「いえ、何も。」
生徒用の下駄箱で落ち合い外に出ると、激しい雨の音は煩いくらい耳に飛び込んできて星川の声をもかき消していく。
だから、何気なくこいつが吐き出した本音が俺の耳に届くことはなかった。
「さて、早く帰りましょう。」
「…………あぁ…」
俺は何の迷いもなく広げられた傘の中へ入ると、星川は何か言いたげな表情をしていて、
「ん?なに。」
「いえ……。」
しかし…その意味を深く考えようともせず、俺はいつものようにそれに蓋をした。
そんな俺を試すかのように、歩き出してすぐ繋がれた右手。
「おっ…おいっ!まだ校内だろっ!」
まるで恋人同士みたいで急に恥ずかしくなる。
「誰も居ませんし、傘で誰かなんて分かりませんよ?」
「でもっ、一応……さ。」
「誰かに見られてバレても、僕は全然構わないんですけどね……」
そう言うとそのまま素早く触れるだけのキスをされ、強く繋ぎ直された指先は俺の指を一本、二本と絡め取って、あっという間に恋人繋ぎに。
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