6 / 11

第6話

「ただいまー」 美央はなるべく早く帰る ために、走ってきた。 しかし、誰も来ない。 (リビングにはいない。客間に  いるのかな) 客間の(ふすま)を開けると 何とも重々しい雰囲気だった。 「美央、座りなさい。この  子が美央です」 「初めまして、美央くん。  私は佐藤拓海といいます。  隣にいるのは秘書の隆文です」 「よろしくお願いします」 美央は内心ドキドキしていた (どうして、こんなにドキドキ  してるんだろう) 今の美央には分からなかった。 「早速ですが、美華さんを  私の妻に迎えてもいいの  ですね」 「えっ、どういう事お父さん!?」 状況が飲み込めず、つい大声を 上げてしまった。 「いいか、落ち着いて聞いてくれ。  今、我が社は経営が悪化して  いて、融資が必要なんだ。  そんな中、大企業のサリーが  融資をしてくれるって言っている  んだ。その条件に姉の美華を  花嫁にしようとしていたんだが・・」 (経営が悪化している、知らなかった。  それに姉さんは好きな人がいるのに) 「それは、駄目です。姉さんには  好きな人がいるんです」 「何だと!!そんな事一言も・・」 「だから、僕が花嫁になります」 「何を言っているんだ」 お父さんは拍子抜けしたように 見えた。 「変装して化粧もすればバレません。  それに、声変わりもしてないし  だから、お願いします。」 美央は必死だった。

ともだちにシェアしよう!