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告白のとき

(毎度毎度、飽きずに同じネタを振ってくれて。呆れ返って逆らっているのが、分かっているだろうに)  島の診療所で医者をしている親父から、月に数回ある連絡という名のメール。そこに書かれている内容に、顔を歪ませるしかない。 『もういい年なんだから見てくれのいい内に、相手を騙くらかしてもいいから、とっとと結婚しろ! 早く孫の顔を見せてくれ!』  それを「忙しいから」という理由をつけたり、「出逢いがないから」という、いい訳をつけたりして、誤魔化していたのだけれど―― 「そろそろはっきりさせなきゃ間違いなく、もっと煩くなるのが、目に見えるんだよね。親子だからこそ分かる事実……」  面倒くさいことが書かれているスマホの画面から、ベッドに視線を移した。嬉しそうな表情を浮かべ、幸せそうにぐーすか眠っている歩の姿に、思わず笑みが零れてしまう。 「男とデキてるなんて知ったら、病院に行って検査しろとか、いろいろ言われちゃうだろうな。気難しい親父だから」  だけど、このままでいるワケにもいかない。俺はコイツと、一緒に生きていくって決めたから、尚更。  小さなため息をつきながら返信すべく、当たり障りのない内容を考え、ぽつぽつと文字を書いていった。 『今度の夏休み、若い看護師見習いを連れて、島に遊びに行くよ。楽しみにしてて』  ソウシン(・ ̄ヘ ̄)θ★[\/]☆)ノ`□´)ノ  あえて、性別を書かずに送ってやった。きっとこの文章を読んで、勝手に小躍りするであろう。そしてフェリーから降り立つ俺たちの姿を見て、愕然とすればいいんだ。  火に油な状態だけど、なるようにしかならないのが分かっている。それよりも―― 「一緒に両親のところに行くって言ったら、コイツがどんな顔をするのか。そっちの方が興味深い」  くすくす笑いながらベッドに入り込み、くっつくように横たわった。起きたらまずは、告げなきゃいけない大事なことを、いろいろと考えながら――  つづく

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