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全寮制…1
4月 暖かい季節ー
だが此処は街が小さく見える程離れ高い位置にある。
暖かい季節とはいえ山では肌寒い
バスから降り門をくぐり寮を目指し進む。
入学説明会で案内された場所の記憶を必死思い返しながら
『圧巻…』
その視線の先には学生寮というにはあまりにも贅沢で綺麗な建物に
その周り広がる丁寧に育てられたであろう花壇の花々。
入学説明会で1度見たとはいえ思わず声が漏れとしまう。
そんな建物へ足を踏み入れ広いロビーを横目に寮監事務所に向かう
『すいません_入寮を「あぁ外部生の柊くんだね?」
言い終わる前に俺の右手にある物へ視線を向けながら喋るおじさん
こんなの持っている学生は中々いないだろう…こういう時は楽でいい。
1度中へ引っ込んだ後127と書かれた白い紙がついた群青色をしたカードを差し出された。
どうも部屋番号とカードキーの予備らしい。
背負った大きめのリュックを早く降ろしたい為さっさと部屋へ行こうと足を進めるも
やはり人の目線は俺の手元にいく
常に使わなければならないものではない
今日は慣れない道のりを歩かなければならないからと一応持っている杖。
個人的に支障はない
は嘘だ。常に痛みはあるが我慢できないものではなく寧ろ長年付き添っている痛みなので気にしても仕方ない…
普通に歩いているつもりだがどうしても左足の動きが他人の目から見ると不自然な様で自然と視線は集まる。
これも慣れたもの…だからといって気分の良いものではない。
視線を無視しつつ辿りついた127の数字とその下には俺の名前ともう1つの名前が記入されたプレートが付いている扉の前
ー臼井 良太ー
読みやすい名前で一安心だ
あとはこの臼井君が良い人である事願うしかないな…
なにせこれから共同で部屋を使うのだから平和的に俺は暮らしたい。
そんな思いを願いつつインターフォンを押す。
ピンポーンと音のすぐ後にこちらに向かってくる音がする。
「はいよー…ん?あー柊か?」
現れたのはいかにもスポーツで青春しています
爽やかな好青年。
この人物も杖で俺を特定したらしく目線は杖に向かっているが不躾な視線という訳ではなく特定の為だけとすぐに俺の顔へと視線をうつす。
『はい、柊 令樹です。これからよろしく』
「同い年だからそんな堅くなくていいだろー、とりあえず入れ入れ」
人の良さそうな笑みを浮かべ部屋の中へ即す彼はそそくさとリビングへ向かう。
そんな彼を追うように玄関で靴を脱ぎ杖を置き追う。
「座って座って。此処まで結構距離あっただろ?あ、俺臼井 良太よろしくな」
リュックを床へ降ろし椅子に座るとお茶を差し出される。
どうも良い人そうだ…
『臼井君ありがとう。確かに此処まで結構歩いた』
「呼び捨てでいーよ、足疲れてね?」
同室だからある程度俺の足の事は聞いているのか気遣いに心が暖まる。
だが俺は表情が出づらい、少し困ったような笑みを浮かべ俺に問いかける臼井には申し訳ない。
『ちょっと疲れた…説明会の時より長く感じたよ』
「だろうなー無理せず少し休め、荷解き良かったら手伝おうか?」
臼井はなんて良い人なんだ!
もう感激すら覚える。
申し出を有り難く受け取ると臼井はテーブルの端に置かれた小さめの白い封筒を手渡してくる。
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