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第42話
そのあとシャワーを浴び、ベッドの上でまた智紀さんに捕まった。
明日も仕事忙しいだろうにまたシたくなった、とか言って結局―――。
でも本当に平日の二回って結構きついと思う。
智紀さんはしつこいし。
俺はというと何度もイかされて智紀さんの腕の中ってことも構わずに抗いがたい睡魔に襲われ半分目を閉じかけていた。
「本当今日はいい日だったなー」
智紀さんの手が俺の髪を撫でて梳いてってしている。
それがくすぐったいような心地いいような感覚でますます俺の瞼は落ちそうになった。
「……今日……ホワイトデー」
ですから、という最後のほうは言葉にならなかった。
人肌に包まれているせいもあるのか、いや単純にしつこくイかされて疲労しきっているから―――もう無理だ。
眠い、と無意識に智紀さんの肩に額を押し付けるようにしながら目を閉じた。
すう、と意識が遠のく。
「―――千裕」
智紀さんの声に僅かに引き戻されて、なんですか、と多分返した。
だけどもうほとんど俺は眠りの中に両脚を突っ込んでいて。
『ねぇ、俺と』
付き合おうよ。
続く言葉は上滑りして聴こえたけど認識するまでには至らなかった。
わからないままに、
「……いいですよ」
と言って、俺は完全に眠りについた。
***
「ちゃんとわかって返事したのかなぁ、ちーくん?」
くすくすと笑ってそう呟き、智紀さんが俺の耳にキスしたことなんて俺は知る由もなかった。
【Candy:END】
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