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佐藤と鈴木
「俺、童貞卒業したいんだよね」
俺の部屋で勉強中、親友の鈴木がそう言った。
「はあ?」
突然何を言い出すんだ、こいつは。
放課後一緒に課題をやろうと言ってきたのは鈴木なのに、真面目に勉強をする気がないのだろうか。
「くだらねぇこと言ってねぇで課題やれよ」
「いや、でもさ……佐藤は童貞じゃないわけだろ?」
「そうだけど、それがなんだよ」
「クラスの奴等もほとんど非童貞だし、俺だけ童貞って嫌じゃん!」
「別に周りがどうだろうと関係ないだろ」
「出た~。非童貞の余裕!」
「…………」
これ以上話していても時間の無駄だと思い、ノートと教科書に視線を戻す。
鈴木はどうしてこうもバカなんだろう。
「でさ、俺、気付いたんだよ」
「…………何にだよ?」
ノートにシャープペンを走らせながら、一応聞いてやる。
「童貞って別に相手が女じゃなくても卒業できるんだって!」
「…………はあ!?」
課題を解く手を止めて、鈴木の顔を見る。
鈴木の頬はちょっと赤くなっていて、どことなく息も荒い。興奮しているみたいだった。
「だから、相手が男でも童貞は卒業できるんだよー!」
「はあ、まあ、そうだろうけど……」
そうだろうけど、でも、それでいいのか?
ちょっとあまりにも必死すぎやしないか。
「と、言うわけだから……ちょっと抱かせろ」
「…………」
こいつは、本当に何を言っているんだろう。
「な、何言ってんだよ、気でも狂ったのか?」
「狂ってねぇよ!今から彼女作ってヤるより、佐藤にお願いした方が楽だって気付いたんだよ」
「バカじゃねぇの!?友達にするお願いじゃねぇだろ……」
「ちょっとだけでいいから抱かせろよ」
「ちょっとってなんだよ!嫌だよ!」
これは必死すぎて引く。ドン引きだ。
そんなに童貞を捨てたいのか?
そんなにセックスがしてみたいのか?
自慢じゃないが俺は今まで女に困った事はなかったので、女にモテないヤツの考えている事は全く理解できない。
俺がドン引きしていると、鈴木は驚くべき行動に出た。
「頼む、ヤらせてくれ」
正座の姿勢から前にお辞儀をするように倒れて、床に額を付ける。いわゆる『土下座』だ。
「一生のお願いだ、佐藤にしか頼めないんだ」
「…………」
土下座までするなんて、なんだかだんだん哀れに思えてきた。
「……わ、分かったよ」
「え!?」
鈴木が顔を上げる。
鈴木は目を丸くして、驚いたような表情をしていた。
「なに驚いてんだよ、お前がヤらせろって言ったくせに」
「いや、でも、まさか本当に……」
「やっぱ辞めとくか?」
「いや、ヤる!!」
二人でベッドに移動して、向き合う形で座る。
「最初ってどうすんの?キスでもする?」
「キスはしなくていいよ」
「なんで?最初ってキスからじゃないの?」
「いいから、するならさっさとヤってさっさと終わらそうぜ」
女となら最初はキス、というのも有りなのだけど、鈴木とキスはしたくない。
唇はガサガサだし、歯も磨いてなさそうだし、友達同士だし。
鈴木はただヤりたいだけなのだから、恋人同士のようにキスをする必要なんてないだろう。
「じゃ、もう突っ込んでいいの?俺まだ勃ってないけど……」
「勃起させろ。俺はその間慣らしとくから」
「慣らすって?」
「…………」
鈴木が首を傾げて聞いてくる。
言わないと分からないのか?
ヤれるなら男でもいい!というくらいなのだからそれなりに知識はあると思っていたのだけど……
「……け、ケツの穴をだよ。挿れなきゃ童貞卒業できねぇだろ?」
「あ、ああ……なるほど……」
改めて口に出すと恥ずかしいな。
なんで俺がこんな恥ずかしい台詞を言わなきゃならないんだろう。
渋々ベルトを外し、ズボンを下ろす。
鈴木はベッドの上に胡座をかいて、ずっと俺を見ている。
「なに見てんだよ、お前も早く勃起させろよ。こんな事さっさと終わらせたいんだから」
「え、ああ……うーん……」
「なんだよ?」
鈴木が顎に手を当てて、何かを考え込むような仕草をしている。
そして暫くして、
「お互いにヤり合った方が良くね?」
「…………」
またバカな事を口にした。
「なあ、そうしようぜ。俺がお前のケツ慣らすから、お前も俺のちんこ触ってくれ!」
「や、やだよ!」
「なんで!?」
「なんでって……俺らダチだろ!」
「じゃあ恋人になろう!」
「なんでそうなる!……って、ちょ、うわっ」
鈴木に押し倒されてしまった。
俺の方が体格は良い筈なのに、簡単に押し倒されるなんて情けないな。
「ちょ……!?」
鈴木の手が俺の下着に伸ばされる。
そして上手く抵抗する事が出来ずに、あっという間に下着を取っ払われた。
「うわ、ちんこでかっ」
「見るなよ!バカ!」
「足広げて」
「…………」
大人しく従い、ゆっくり足を広げる。
いわゆるM字開脚だ。
「わっ……」
鈴木に足を持ち上げられる。
アナルまで丸見えになるような姿勢を取らされて、羞恥心が込み上げてくる。
普段自分でも目にしないようなところを誰かに晒すのは、予想以上に恥ずかしかった。
「は、恥ずかしいって……やっぱもう辞めようぜ……」
「佐藤、顔真っ赤だよ」
「うるせぇな……っ、ひゃっ」
アナルにひんやりとした何かが触れた。
鈴木が指で俺の肛門に触れたんだ。
皺を伸ばすように穴の表面を擦られて、変な感じだった。
「指、挿れていい?」
「な、なんか、ローションとか……」
「ローション?そんなん要る?」
「要るだろ、女みたいには濡れないんだぞ」
「そっかぁ、じゃあ……」
「ぎゃあっ!?」
鈴木が何を思ったのか、俺のまだ勃ってないちんこを握ってきた。
「なにすんだよ!?」
「いや、ぬるぬるさせようと思って」
「は、はあ……?」
「ローションの代わりになるかと思ったんだよ」
ああ、なるほど。そういう事か。
鈴木はちんこから出てくる我慢汁をローション代わりに出来ないかと、そう思った訳だ。
「うぅっ……」
鈴木がゆるゆるとちんこを握った手を動かす。
程よく力を込めて、俺のちんこをしごいていく。
「うっ……」
愛撫されて、悔しいけど少しだけ感じてしまった。
俺の息子が鈴木の手の中でドクンと脈打ち、少し大きくなった。
「はぁっ、くっ……うっ」
「気持ちいい?」
「ん、うぅ……」
「なあ、どうなんだよ?」
鈴木の問いには答えてやらない。
行為中に快楽の有無を聞いてくる男はウザがられるって、ちゃんと教えておいてやらないと。
「うわ、ぬるぬるしてきた……」
「…………っ!」
暫くしごかれていると、俺のぺニスの先端からとろりとした透明な液体が溢れ出した。
鈴木は竿の部分をしごいていた手を止めて、零れ落ちそうになっている我慢汁を指先で掬う。
「うぁっ……」
「ふふ、すげぇ、ぬるっぬるだな!」
そしてその掬った我慢汁を、俺の尻の穴に塗り付ける。
「はっ……くっ……」
生暖かい液体を、擦り混むように塗りたくられてゾクゾクする。
「指、挿れるぞ」
「えっ、待っ……!」
鈴木は俺の返答を待たずに、指を俺のアナルへと突っ込んできた。
我慢汁のぬめりで、滑るように指が挿入される。
「い、いだっ……!」
しかしやはり腸内はキツく、尻にピリリとした刺激が走る。
「痛い?」
「いてぇよ!う、あっ……」
痛いと訴える俺を無視して、鈴木が腸内に挿れた指を折り曲げ、腸壁を擦って来る。
「うっ……」
尻の中でぐにぐにと動く指が気持ち悪い。
最初ほど痛みはないが、違和感がある。
「気持ちいい?」
「……ねぇよっ、気持ち悪いっ!」
鈴木が腸内を擦るのをやめる気配はなかった。
俺はシーツを握って、唇を噛み、内臓を掻き回される妙な感覚に耐えた。
「……あっ、はっ、はぁっ」
鈴木に腸内を掻き回されて、何分ほどが経っただろう。
鈴木の指が奥に、より深くにまで侵入してきた。
「気持ちいい?」
「うっ、ぁ……」
「なあ、答えろよ」
「…………」
正直言うと、時折イイトコロに当たる。
よく分からないが指先がとある一点を掠めた時に、確かな快感が走る。
俺の身体は勝手にビクッと跳ね、口から変な声が漏れる。
「ちんこ勃ってんな。気持ちいいんだろ?」
「うあっ……!?」
鈴木が空いている方の手で、俺の少し勃起したちんこを握ってきた。
そしてその手を上下に動かしてちんこをしごく。
「はっ、はぁっ、あっ、うっ」
前と後ろを同時に責められて、声が抑えきれなくなる。
女みたいに喘いで、恥ずかしいやら情けないやらで気が変になりそうだった。
「うっ、あっ、くぅっ、あぁッ」
「良さそうじゃん」
ぬるぬるした我慢汁をローション代わりにしてちんこをしごかれるのは、ビックリするほど気持ち良かった。
男同士だから良い所や力加減が分かるのか?
女にして貰うより気持ちいいかもしれない。
「ふっ、くぅ、あっ……!」
「イキそ?」
「ふああっ、はあっ」
鈴木はニヤリと笑みを浮かべて、アナルに挿れた指とちんこをしごく手の速度を速める。
「あっ、待てっ、やめっ、イ、イっちゃ……!」
「イっていいよ」
「ふあっ、嫌だッ、あっ、あっ!」
鈴木にイかされるなんて悔しいし、情けないし、恥ずかしい。
友人に自分が射精する所なんて見られたくない。
そう思うのに、俺の身体は快楽に震え、更なる刺激を求める。
「うぁあっ、あぁッ、あっ」
快楽がどんどん蓄積されていって、だんだん絶頂に近付いていく。
尿意に似た感覚に襲われるが、今のこれは尿意じゃない。
精液が限界ギリギリまで込み上げて来ているんだ。
そして、ついに、
「あっ、ふああっ、んああぁッ!」
一際大きな声が口から漏れて、ちんこの先っちょから精液を吐き出した。
吐き出された精子は鈴木の手や、ベッドのシーツに飛び散った。
「なあ、悪かったって」
鈴木がニヤニヤしながらそう言った。
俺は無視してシーツに飛び散った精液や我慢汁をティッシュで拭う。
「謝るから俺のちんこもしごいてよ!お前だけイってズルいぞ!」
「イきたくてイったわけじゃねぇよ!」
「でも気持ち良さそうにしてたじゃん!」
「俺、嫌だって言ったのに、お前、辞めてくれなかった……」
「結局俺、童貞卒業できてねぇし!」
男友達に射精を見られるなんて絶対嫌だった。もう最悪だ。
こんなに恥ずかしい思いをするなら、最初からもっと抵抗していれば良かった。
流されて承諾なんてするんじゃなかった。
ああ、顔が熱い。
今の俺はきっと顔が真っ赤になっているに違いない。
こんなことになってしまって、なんだか涙が出そうだ。
「なあ……」
「なんだよ?続きならしねぇぞ」
「俺のこと、嫌いになった?」
「あぁ?」
鈴木が眉を下げて、ちょっと不安そうな顔をしている。
急にしおらしくなりやがって、なんなんだコイツは。
「もう俺と友達辞める?怒ってる?」
「怒ってるけど、友達は……辞めねぇよ。嫌いになってない」
「ほんと?」
「本当だよ」
だって俺は、お前と一緒に居る時が、一番楽しいから。
女とデートをしている時よりも、鈴木と一緒にふざけあっている時の方が俺にとってはずっとずっと楽しいんだ。
「そっか、安心した」
「じゃあもう帰れよ」
「冷たっ!……まあ仕方ないか。今日は帰るよ」
鈴木が広げたままにしていた教科書やらノートやらを鞄に適当に詰め込み、その後に立ち上がる。
そして、笑顔でこう言った。
「今日は諦めるけど、いつか絶対お前の処女を奪ってみせるからな!」
「勘弁してくれ……」
まだヤるつもりなのか?
実はお前ゲイなんじゃないのか。
色々言いたいことはあったけれど、言葉にする前に鈴木は部屋を出て行った。
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