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第1話 

  小さな頃、炎が嫌いだった。 悲しくて、苦しくて、辛くて悔しい。そんな気持ちになりながら母の後ろに隠れていた。誕生日のケーキのろうそくは、幼い時に大泣きしてから灯されていないほど。そんな記憶も年齢が二桁になる頃にはほとんど薄れ、俺はこの春、高校生になった。 俺の通う高校は、もともと男子校で、女子は全体の20パーセント程度。クラスによっては女子がいないクラスがあるほどの「なんちゃって共学」。俺のクラスの女子は5人。小学校から一緒の幼馴染は男子だけのクラスで絶望していた。 「実桜ー!おーい、みーざーくーらー!」 不意に背後から声がする。入学式の前なのに、既に絶望している幼馴染の洟 拓海(はな たくみ)が走ってきた。 「実桜、聞け!お前のクラス、スッゲー美人がいる!」 「お前、そういうの目ざといのな。」 どうだと言わんばかりに、ドヤ顔の拓海。 「だがな、その美人は男子だったわ…人生って残酷だよな」 ヤツは俺の両肩に手を置いて悲しそうに笑ってみせた。拓海は男の俺が言うのはどうかと思うが、小さくて可愛い。中学の頃から男女問わずモテているのに、自分では気づかない残念さがある。推定身長160センチ(本人申告は165...)、色白で華奢、くりくりおめめでふわふわした雰囲気の割には、男気溢れるアンバランスな言動。いわゆるギャップ萌えの方々に熱狂的な信者もいるほど。 「お前の方が美人なんじゃねえの?ハニーちゃん?」 「あ、ちょ、その呼び方やめろよ!それは中学までで、俺はこれから身長が伸びてカッコいい男になるんだからな!」 「そ?俺はハニーのままでいいと思うんだけど?」 顎に指をかけて、クイっとこっちに向かせ、真っ赤になった幼馴染みに顔を近づけて笑うと、周囲から悲鳴とどよめきと溜め息が聞こえる。正直、俺にそっちの趣味はない。ただ、幼馴染みにつく悪い虫を未然に防ぎながら、周囲にサービスしているサービス精神旺盛な男だ。 「そそそそそ、そろそろ、にゅ、入学式が始まるぞっ!教室、行くからな!」 真っ赤な顔のまま、猛ダッシュする拓海にひらひらと手を振って自分の教室に入った。

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