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『甘く酔わされて……』
★
「直くん、Trick or Treat!」
夕食を済ませて、ソファーで寝転がってテレビを見ていた俺に、突然、透さんが声をかけてきた。
そうだ、今日ってハロウィン?
「Trick or Treat!」
きょとんとしている俺に、透さんがもう一度そう言って微笑んだ。
「え、ああー、俺、なんにも用意してないー」
ハロウィンなんて、すっかり忘れていたし、
毎年、ハロウィンだからって特別な事をしたことなんてなかったし。
「そう……じゃあ、悪戯していいよね?」
なんか企んでそうな、悪戯っぽい眼差しで見つめられる。
透さんに悪戯されるなら、それはそれで嬉しい……なんて思ってしまう俺は……変態なのか?
考えていたら、チュって唇にキスされた。
「……ん、いいよ、どんな悪戯してくれるの?」
唇が触れるくらいの至近距離。
「これ、飲もうか」
そう言う透さんの手には、リモンチェッロ。
夏休みに俺がジュースと間違って飲んで、酔っ払ったアレ。
「え、でもそれ……、俺、飲んでいいの?」
甘くて美味しいけど、アルコール度数30もある、イタリアでは食後酒として飲むリキュール。
「明日、学校は午後だけなんでしょ?」
「そうだけど……、でもお酒呑んだら帰れなくなるよ」
「いいよ、今日は特別に泊まっても」
いつもなら週末しかお泊りを許してくれない透さんの申し出に、俺が断るはずなんて、勿論ない!
「冷凍庫で冷やしてあったから、きっと美味しいよ」
そう言って、透さんはショットグラスに、リモンチェッロを注いだ。
綺麗なレモン色が、グラスの中で揺れている。
透さんは、それを一気に口に含むと、俺の後頭部に手を回して引き寄せる。
ぐっと近付いた透さんの唇は濡れていて、漆黒の瞳に見詰められたら、俺は身動きもできなくなる。
次の瞬間、重なる唇。
流し込まれる、甘くてとろみのある、液体。
「ん……」
咥内に広がるレモンの香り。
こくっ、と音を立てて、それを飲み下すと同時に透さんに舌を絡め取られた。
甘いとろみは、まだ咥内に残っていて、透さんの舌が触れる処から熱が広がる気がする。
「ふ……ッ……ッン」
一度離れて、角度を変えてまた重なる唇に、気が遠くなるほど酔わされている。
――これが悪戯なのか?!
こんな悪戯なら、いくらでもして欲しい。
「どぉ?美味しい?」
耳元で囁いて、そのまま耳朶を甘噛みされる。
「あっ……ッ、ん、美味しい。もっと飲みたい。」
リモンチェッロが欲しいんじゃなくて、透さんのキスが欲しい。
んな事を考えていたら、いつの間にかボトムも下着も脱がされて、ソファーにうつ伏せに押し倒された。
「――透さんっ?」
肩越しに首だけで振り返ると、透さんはまたショットグラスにリモンチェッロを注いで……、それに指を浸して…、
「今日は、いっぱい酔ってもいいからね」
そう言って、リモンチェッロを絡めた指が、俺の後孔に……
「――あっ、……冷たっ……」
キンキンに冷えた、リモンチェッロが中に沁み込んでいく。
……なんか、気持ちいいかも……。
「直くん、気持ちいい?」
透さんはそう言って、リモンチェッロを口に含んで、後孔に唇を寄せる。
「――えっ、ちょっ……あ、ぁっ!」
止める間もなく流し込まれて、舌まで侵入してくるっ。
さっき口移しに飲んだリモンチェッロで、確実に酔いは回ってきてて、身体が熱くなっていく。
なんだか……リモンチェッロを入れられた後ろも……熱くなってきた気がする。
や、やばい、なんか全部トロトロになってきた感じが半端ない!
「直くん、やっぱりお酒弱いよね?」
もういつの間にかシャツも脱がされて、背中に舌を這わせながら、そんなこと言われて、
「――弱くな、んか……はぁッ、……んぁ、!」
背中弱いもんだから、反論しようとしても舌も回らなくて、段々、酔いも回ってきた頃に、透さんの硬くなったものが挿ってきて……。
「ああーーッ、とーるっさ、んっ、もっと、奥までッ」
なんて、恥ずかしい事を口走っていたなんて、全然知らないもん、俺。
***
翌朝起きたら、勿論二日酔いで……。
昨夜のこと、よく覚えてないんだけど、俺、また、すんごい乱れたような気がします。
来年からは、ちゃんとお菓子用意しようと、固く心に誓った俺でした。
甘く酔わされて…… end / + to be continued → →
2013・10・31 / Happy Halloween
リモンチェッロは、番外編『Moonlight scandal』の最後に、
直が、レモンジュースと間違えて、ぐびっと飲んでしまって、
酔っ払っちゃったアレです。
イタリアでは、食後酒にストレートで飲むそうですが、
アイスクリームなんかにかけて食べても美味しいと思います。
やまなしおちなしいみなし。801SSでしたm(u_u)m
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