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第1話雨の日
この頃、雨ばかりだ。
雨は嫌いではない。昔の恋人をおもいだすから。
「雨の降りはじめのアスファルトの匂いがすき。」
なんて話しを前にしたことがある。
「ふ~ん。」なんてそっけない返事をされたことを覚えてた。
「卒業したらここを出ていく。単身赴任をしてる親父のとこに行く」
雨の日にいきなりそんな話しをされたから
雨の日に話しをしたことを思いだした。
「ん。」
「親父が単身赴任先をえらく気にいっててもうずぐ定年だから、定年後に住みたいらしいんだよね。」
「ん。」
「だから家族で行く事になったんだ。」
「……。」
「弟の学校のことがあるから……」
「そこで就職するの?」
「ん。やっぱり両親も歳だから。弟の面倒みるの大変だろうから。一緒にいたいんだよ。」
「そっか。」
「ごめん。」
「……わかった」
そこで話は終わり。
あんなにお互いをもとめあって愛しあったのに。
別れってあっけなかった。そうしたのは自分だけど。
泣いてすがってもかえられない。あいつの家の事情も知ってたし。
今日言われたってことは明日?いや今日あたりおばさんから母さんが聞いてくるか。
なんせ幼なじみ、同じ町内だからな。
就職をきに実家をでて数年たって突然母さんからの電話におどろいた。
弟がなくなった。葬儀に参列するためにお前の住む町に向かった日も、やっぱり雨だった。
少しの言葉と、雨で昔を思いだしたのは俺だけかな。。。。
母さんに「やせたわねー」なんて思われて元気
がやっぱりないね。と。。。
でもどうすることもできないし。
そのまま別れようかとも思ったけど、母さんが「話してくればー」
背中を押された。
「少しいいかな。」
普通に話せただろうか。心配になる。
昔の話から今の話まで。
あの時、追いかければよかったのか。泣いてすがればよかったのか。
俺の選択はただしかったのか。お前に聞きたかった。
「あれでよかったよ。俺はね。幸せだったから。」
どうにもできなかった。何もできなかった。
雨の中では。
・・・・・
・・・・・
あれから、いくつかの季節と雨の日を過ごした。雨の日はあの時のことを思いだしては
何もせず過ごしてた。
でもある時、おもいがけない言葉をもらった。「迎えにいってあげれば。」!
やっぱり雨の日に迎えに行くことに。
たどたどしい言葉にただ俯いて、
雨で濡れたのかそれとも、涙なのか。。
お前の顔を濡らす滴を手でふいて、
顔あげたお前に優しくキスの雨をふらせた。
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