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光射す午後に22
樹の反応が予想と違ったのか、和臣はちょっと呆れ顔で
「あんたって人形みたいだな。人間っぽい感情、あるわけ?」
「和臣くん」
月城が穏やかに諌めると、和臣は首を竦めてみせた。
「俺、あんたのことは嫌いじゃない。姉さんはきっと嫌がるだろうけどさ。藤堂薫。あいつのことが好きなんだろ?あんた」
樹は微かに瞬きをして、目を伏せた。
和臣が何を言い出すかハラハラするが、自分の気持ちを心の奥に無理やり押し込めてしまった樹には、これぐらい強引な方がいいのかもしれない。
「好きなら奪っちゃえよ。あいつだって本当は姉さんじゃなくてあんたの方が好きなんだろ?」
「ね……和臣くん。それ、巧叔父さんから……聞いたの?」
「うん。おっさんからも聞いたけど、最初にそれ知ったのは、姉さんが泣きながらおっさんと電話してるの聞いたから」
「……そう。じゃあお姉さんが大学の時?」
和臣はちょっと遠くを見つめるような表情になり
「俺さ。姉さんが好きな男がどんな奴か、知りたかったんだよね。そいつがちゃんとした奴でさ、姉さんのこと大切にしてくれるかどうか。でも藤堂薫は違った」
「違わないよ、和臣くん。あの頃、にいさんは勘違いしてただけなんだ。僕が、全部悪かったんだよ。にいさんの優しさに甘えて、僕がにいさんを誘惑してしまったから」
樹は消え入りそうな声で、何度もつかえながら必死に言葉を紡ぐ。和臣は疑わしげな目で樹を睨むと
「あんたがあいつを……?だってあの時、あんたまだ中学生ぐらいだろ?義理でも弟で中坊のあんたに、手を出した兄貴の方が悪いに決まってる」
樹はふるふると首を横に振ると
「違う。にいさんは優しかっただけ。だから僕を突き放せなかった。僕が卑怯な手を使ってにいさんを、」
「和臣くん。君は、お姉さんのことが大事だったんだね。だから自分から首を突っ込んでしまったのか」
樹の声が酷く苦しそうで、月城は少しだけ間に割って入った。
和臣はちらっとこちらを見て鼻を鳴らすと
「俺は、姉さんのことが好きだったんだ」
「お姉さん想いのいい弟くんだね。だが、これ以上、君は深く関わっちゃいけない」
和臣は椅子にふんぞり返ってこちらを鋭い目で睨みつけると
「だから、それって今更じゃん。もう充分関わっちゃってるだろ。俺は実家には戻んないよ」
「でもそれでは命を落とすことになる。これ以上は本当に危険なんだ。君はあの連中を甘く見ているよ」
和臣は、はぁ…っとこれみよがしなため息をつくと
「甘く見てねえから、今更戻れないんじゃん。俺の身元はもう割れてる。奴ら、その気になりゃ山形まで俺を連れ戻しに来る」
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