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光射す午後に24
和臣のちょっと駄々っ子のような言葉に、樹はくすっと笑って
「そんなに、にいさんが嫌い?」
「うん。あんたには悪いけど、俺はああいう見てくれだけの男は嫌いだ」
「はは。手厳しいな。君は、にいさんのこと、そんなによく知らないだろう?」
「あいつは姉さんと付き合ってたのに、あんたに浮気した。でもあんたに振られると、また姉さんとよりを戻して結婚した。俺が知ってるのはそれだけだけどさ、それで充分だよね、嫌いになる理由」
バッサリと切り捨てる和臣に、樹は苦笑している。
たしかに、起きた事実だけを並べればシンプルにそうなる。でも人の気持ちの機微はそんなに単純ではないのだ。たとえ結果的にはそうだったとしても、言葉では説明しきれない様々な要因が複雑に絡んでいたのだ。
「じゃあ、そろそろ教えてくれる?君が巧叔父さんと会うきっかけになったところから」
樹は改めて和臣の方に真っ直ぐに目を向けた。和臣が仕方ないなぁというように小さく舌打ちして話し始めた途端、樹のポケットのスマホが電話の着信を告げる。
「あ、ごめん。ちょっと待って」
樹はスマホの画面をチラッと見ると、椅子から立ち上がる。
「電話してくる。待っててね」
そそくさと廊下に向かった樹を見送ると、和臣はこちらに目を向けた。
「あいつの本音、違うだろ?」
「さあ。どうだろう」
月城がとぼけると、和臣は顔を顰めて
「なんで別れたの?樹さんと藤堂薫」
「巧さんから、何も聞いてないのかい?」
「んー。理由までは知らない。樹さんの方が、兄貴に愛想つかしたとしか」
「なるほど。まあ、そういう感じかな」
「でも樹さんは、今でも藤堂薫のことが好きだ。そうじゃなかったら、俺のこと、危険をおかしてまで助けたりしない」
「君のことはね、樹くん自身、責任を感じているんだよ。薫さんとの繋がりがなければ、君が巧さんに目を付けられることもなかったからね」
和臣は背もたれにふんぞり返ると
「そういうの、俺には理解不能。樹さんが責任感じる必要なんかないじゃん」
「樹くんはね。昔の自分に君のことを重ねているんだ。だからきっと、放ってはおけないんだね」
和臣は両手を頭の後ろに組んで、こちらをじろっと見て
「樹さんは藤堂薫と別れてから、あのおっさんと暮らしてたんだろ?どこで?おっさんが言ってたアメリカ?」
月城は廊下にいる樹を気にしながら、声をひそめた。
「しばらくは関東にいたよ。その後、渡米してね。アメリカと日本を行き来してた時期もある。完全に帰国したのは1年ほど前だ」
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