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光射す午後に26
樹を助手席に乗せ、自分も運転席に乗り込む。エンジンをかけて車を発進させようとした時、何かが前に立ちはだかった。
逆光でよく見えないが、人だ。
月城はウィンドーを開けて叫んだ。
「おい、何やってる!」
「俺も連れて行けよ!」
立ちはだかっていたのは和臣だった。
いつの間にか入院服からTシャツとジーンズに着替え、シャツを肩に引っ掛けている。
「何言ってるんだ。戻りなさい、病室に」
「連れて行かないならどけねえ」
和臣はボンネットに覆い被さるようにして、こちらを睨みつけている。
月城は舌打ちをして、ドアを開けた。
「バカなことはやめて。戻りなさい!」
「連れて行けって」
月城は和臣の腕を掴んでボンネットから引き剥がした。
「君が行ってどうする。まだ治療中だぞ」
「俺にも関係あるんだろ?除け者にする気なら、あんたらが行った後で勝手に後を追うからいいぜ」
月城は和臣をぐいっと引き寄せ
「君はまだ病人だ。そんな身体で、」
「いいよ。一緒に連れて行っても」
月城の言葉を遮り、樹が口を挟む。
「いや、でも、」
「いいよ。この状況で置いていけば、その子は勝手に動き回る。そばにいた方がいい」
月城は和臣の顔を睨みつけると、渋々手を離した。和臣は肩から滑り落ちたシャツを拾い上げ、後部座席のドアを開けて乗り込む。
月城は大きく息を吐き出すと、運転席に戻った。
「いいのかい?彼は足手まといだ」
「仕方ないよ。事情も分からずにまた勝手なことをするよりは、僕たちと一緒にいる方がマシだ。それより急ごう」
「……分かった。行き先は?」
「僕のマンションに。黒田さんに連絡して来てもらう」
月城は頷くと、後部座席でそっぽを向いてふんぞり返っている和臣をちらっと睨んでから、車を発進させた。
……ここは……どこだ……?
目を開けたはずなのに、視界は暗闇に包まれている。身体を動かそうとしても、自分の意思では指一本動かせない。
……俺は……どうなったんだ……?
意識を失う前の記憶を手繰り寄せた。
黒づくめのサングラスの男たち。黒い高級車。
そうだ。自分は見知らぬ男たちに囲まれて、車に乗り込んだのだ。
男たちは樹の写真を持っていた。
車に乗ると直ぐに、左右の男たちに両手を後ろ手に縛り上げられ、黒い目隠しを付けさせられた。男たちは皆無言で、慣れた様子でこちらの自由を奪うと、助手席の男が
「大人しくしていろ。無駄に暴れたりしなければ、手荒なことはしない」
「何処に連れて行くつもりだ」
「着けば分かる。おい」
隣の男に布で口を塞がれた。抗う暇もなく、意識が遠のいていった。
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