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溢れて止まらない7

「はっきり言って余計なお世話だ。叔父さんも君も。中学生の樹に手を出していた君に、何も言われたくないな」 薫の語気が荒い。樹はヒヤヒヤしながら、薫の表情を窺った。 月城は苦笑しながら首を竦め 「まあ、そうでしょうね。俺も貴方に今さら意見するつもりはありませんよ。質問されたから、素直に答えただけです」 露骨に怒りをみせる薫に、月城はまったく怯む様子もない。 ……月城さん……すごい……。 ハラハラしながら2人を見守っていた樹は、内心感心していた。自分にはとてもじゃないが、月城のような堂々とした態度は出来そうにない。 薫は怒りを抑えようとしてか、ふぅ…っと大きく息を吐き出すと 「それで、今は樹の会社で働いているんだな?」 「そうです」 「経営は順調だと言っているが、だったら何故今回のようなことが起きる?俺を拉致した男たちは、まともな組織の人間には見えなかった。そういう連中と関わるような危ない仕事の仕方をしているんじゃないのか?」 月城は頷いて 「たしかに。ご懸念はもっともだと思います。だが、今回のことは全くのイレギュラーなんです。話せば長くなりますが、今後こういうことがないように手は打っています。樹くんの義理の父親にも、相談するつもりです」 月城の説明に、薫はまた驚いた顔になり 「樹の……義理の父親?待ってくれ、じゃあ樹は、結婚しているのか!?」 「ああ……言葉足らずですみません。義理の……というか、養父なんです。樹くんと養子縁組をしてくださって、いろいろと後ろ盾になってくださっている方です」 どの話も、薫には寝耳に水なことばかりだ。薫が呆然として自分の顔を見つめてくる、その視線が痛い。 「養子縁組……。それは……アメリカで?」 「いえ。知り合ったのはアメリカでですが、縁組自体は日本に戻ってきてからですね」 薫はますます困惑した表情になり 「そのことは……俺の……いや樹の実の父親は知っているのか?」 「ええ。もちろんです。正式に籍を入れてますので。彼らは、樹くんがまだ15の時に親権を放棄して巧さんに任せっきりでしたので、反対する権利などありませんよ。実際、反対もしてきませんでしたし」 薫はしばらく黙りこくっていたが 「だったら……巧叔父さんはどうしているんだ?まだアメリカにいるのか?」 樹は俯いてぎゅっと目を瞑った。 また話題が際どい部分に向かっている。握り締めた手に、嫌な汗をかいていた。 「……いえ。彼は、今、日本にいますよ。ある施設に入所してます」 「日本に?……施設?」

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