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月の光・星の光25

朝霧と月城を駐車場まで見送ろうとすると「ここでいいから、薫くんの所に行ってあげるといいよ」と朝霧に背中を押された。頷いて頭をさげ、和臣と一緒に歩き出す。その和臣を月城が呼び止めた。 樹は結局、1人で先に病室に向かった。 スライドドアを開けて中に入ると、仕切りのカーテンの隙間から薫のベッドにゆっくりと歩み寄る。 薫はベッドに横たわり、目を瞑っていた。 音を立てないように近づくと、そっと顔を覗き込む。目蓋がピクピクと震え、薫が目を開けた。 「ごめんなさい。起こした?寝てて」 囁くように話しかけると、薫は少し疲れたような表情で弱々しく微笑み 「ああ……。すまないな。急に怠くなってしまって」 「大丈夫。まだ身体、本調子じゃないから。無理、しないで、兄さん」 薫は落ちてくる目蓋を必死に開けようとしている。樹は静かにパイプ椅子に腰をおろした。 「朝霧さんは……もう……帰ったのか」 「うん。兄さんによろしくって。また、来るからって」 薫は気怠そうに掛け布団の上の手を持ち上げる。その手を、樹はそっと握った。 「寝て、兄さん。僕が、側に、いるから」 薫は樹の目をじっと見つめて 「帰らないのか。おまえは」 「うん。月城さんの代わりに、今夜は僕が泊まる」 「……そうか……」 薫はホッとしたように吐息を漏らした。樹が支える手がズシッと重くなる。同時に目蓋が耐えきれないというように、徐々に降りていった。 「ごめんね、兄さん。僕の、せいで」 樹は微かな声で呟いた。 「気に、するな」 薫の声はほとんど音にならない。 そのまま、深い眠りに落ちていく薫を、樹はじっと見守った。 カーテンが開いて、和臣が遠慮がちに顔を覗かせる。 「眠った?」 囁きで問うてくる和臣に、樹は黙って頷いた。 「俺も寝る。明日の朝、検査あるから。結果次第で退院出来るってさ」 「うん。おやすみなさい、和臣くん」 薫を起こさぬように小声で囁きあって、和臣は窓際の自分のベッドに行ってしまった。 樹は、ほぉ…っと小さく息を吐き出すと、再び、薫の方に目を向ける。 薫は規則正しい寝息をたてて、ぐっすりと眠っていた。椅子をズラして更にベッドに近づくと、身を乗り出して薫の顔を覗き込む。 何年も夢見ていた。こんな風に、息遣いが聞こえるほど兄の近くに、居られる日を。 絶対に叶わない夢だと、諦めてはいた。 こんな形で実現するなんて。 兄の手の温もりをもう一度感じることが出来るなんて。 ……夢みたいだ……。

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