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Ⅵ
「いやいや、何妊娠させてんだおまえ……」
昼は師弟漫才、夜は淫らな性生活を送り続けて数か月後。
ポチはげんなりとした表情で主人とその弟子兼嫁――心なしか下腹部がぽっこりと膨らんでいる――を交互に見つめながら言った。
「んん、ゴム無しでナカ出ししまくってたらデキちゃったみたいで……」
てへへと照れるノーマの横で、アデルも満更ではない顔をしている。さしずめ、うまく金ヅルをひっかけて寿退社したOLのようだ。
「いやデキちゃったじゃねえよ、何無計画に孕ませてんだおまえ、オスとして最低だぞ」
「だってアデルは男なのに、妊娠するなんて普通は思わないだろー!?」
「普通はな、普通は。どうせヤってる最中に頭がブッとんでガキができる魔法でも使っちまったんじゃねえのか?」
「……まあ、たぶんそうだね。だって毎回最後孕ませてくれって言うからつい……」
「ちょっと、人のせいにしないでくれます?もう、これだから童貞は……」
「元ね?元・童貞だからね!?もう俺脱・童貞したから!!」
元童貞、必死である。
「つーかアデル、お前はいいのかよ。この冴えない魔法使いとガチで番 になんかなっちまって。復讐も世界征服も諦めるのか?」
ポチの言葉にアデルは一瞬キョトンとした顔をしたが、次の瞬間くすっと笑った。
「いいんだ、これで一生分の衣食住は保証されたし……それに、復讐なんか忘れて幸せになれって僕に言ってくれたのはお師匠様だけだから。実はあれで結構トキメいたんだよね、僕」
「そうか、良かったな」
「うん!」
「そ、そうだったんだ……へえ……」
ノーマは、適当に言った綺麗事が時には本当に人の心を救うのだなと妙に感心してしまった。
「お師匠様は?僕のコト好きですか?」
「えっ……?それは、まあ……」
「僕、新居は都会の3LDKのマンションがいいです!」
「えっ」
「嫁とガキが出来たことだし、まあガンバレよ、お父さん」
「……ウン……」
――めでたしめでたし。
☆オチなどない――……!
【魔法使いの弟子だか嫁だか・終】
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