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214事件?→sideT

ずっと家にこもりっぱなしで、さすがに康史も今日はどこかへ出かけたいというので、今日は教習をとらないで1日休みにした。 誠士も今日は予定がないらしいので、一緒にこいと呼んだところ、康史はいつになくかなり不機嫌になった。 「ま、俺もテキトーに帰るからさ、まあ怒るなよ、康史」 気を使って康史の機嫌をとるように言う誠士は、俺をうらめしそうに見上げる。 「いや、誠士は悪くねーよ。俺が呼んだんだしよ、ヤスそんなあからさまに機嫌ワリー顔すんなよ」 街並みは、なんだか今日はピンクのチラシやのぼりであふれかえっている。 「なーあ、トール。今日は何の日か知ってるよな?」 康史ひちょっと唇を尖らせて、俺を見上げる。 そんなこと急に言われてもな。 なんだったかな。 2月14日って何の日だよ。 俺の誕生日は28日だし、記念日とか言っても康史はなにも覚えてねーだろうし。 んー受験勉強のしすぎか。 「214事件?どっかのクーデター?」 だったけ?歴史的クーデターとか?だったけ? 記憶力はいいんだけどな。 あまり、ちゃんと覚えてねーしな。テストが終われば忘れる主義だ。 「それ、226事件じゃね?……トールにゃ難題じゃねーの」 ぶっと誠士は吹き出して、腹を抱えて笑う。 なんか特別な日付だったか? ちらっと康史を見やると、ため息をついて諦めたように俺を見返す。 「康史、東流にゃ難しいって。ちゃんと事前に教えておかねーと」 「わかってると思うだろ?それくらい…………常識の範囲だ」 ぶつぶつ不満そうな顔をして、康史は俺の腕をとる。 「バレンタインデーだよ」 吐き捨てるように言われて、ぽんと手をたたく。 「あー…………チョコの日か!」 毎年、康史の机や靴箱はチョコで溢れかえる。 今年は登校しねーしなー。チョコはもらえないだろうし。 「だから。2人で過ごしたいんだよ」 ちらっと誠士を見やり、康史をは深くため息をつく。 「え、なんでだ?……チョコの日になんかあるんか?」 普通に、俺はお出かけかと思ったし。 「悪ィ」 誠士は、楽しそうにぽんぽんと俺の背中をたたく。 どうやら、康史にとっては大事な日らしい。悪いことしたなと言う雰囲気を読んだのか、誠士はからからと笑う。 「とりあえず、邪魔ものは消えるしな。康史、顔に出過ぎ」 「誠士、だってお前は分かってて来ただろ」 「あ、わかるー?ヒマだったし」 にまにま笑い、ポケットから小さいチロルチョコを出すと、俺と康史にぽいぽいと手渡す。 「友チョコ」 「男にわたされても……」 「おまえらに言われたくねーつーの。まあ、東高には気をつけんだぞ」 誠士は、けらけら笑いながら駅の方に去っていく。 つまり、康史は2人でデートしたいという意味だったんだな。 「バレンタインなー、あれって女が男にチョコ渡す日だろ……?」 俺はまだよくわからないまま、誠士からのチロルチョコを口に放り込む。 「それは日本のお菓子メーカーの策略で、元々は恋人同士が愛を誓う日なんだよ」 むっとした表情をしながらも、康史は俺の腕に腕を絡ませてくる。 周りに隠すつもりもさらさらないらしい。 「なるほどな。毎年おまえからチョコをおすそわけされてたから、チョコの日って思ってたぜ」 「おすそわけじゃねーよ。東流に渡したのは、全部俺が手作りで作ったんだよ。他のオンナのなんか死んでもやらねーよ」 山ほどチョコをもらってるからって、いつも律義に俺に分け前をくれるのだと思ってたのだが、違ったのか。 「長年アリガトな。分かった。今日は、俺がオマエになんかヤルよ。欲しいもの、考えておけよ」 俺は、康史の腕を掴むと、近くのデパートへと引っ張っていった。

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