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バレンタインデー→sideT

デートならもっとデートらしくした方がイイよなァ。俺は、雰囲気を作ったりとかするのは、よく分からないから苦手だ。 あ、そういや、去年波砂とのデート約束すっぽかして喧嘩してたのもバレンタインの日だったな。 それがバレたのが原因で、別れることになったんだっけ。 あんまり、バレンタインとかを意識したことなかったんだが、康史でさえ拗ねるくらいには、恋人同士には大事な日ってわけか。 特別な日とか、昔から意味がわかんねーなって思ってたしな。 暖かい店から外に出ると、マフラーは巻いてきたが風が少し強くて頬が冷たい。 「寒くねーか?」 手袋をしていない康史の手を握ると、ちょっとビックリした顔をして、俺を見返す。 リングを買おうって言った時もすげえ驚いてたしな。 まー、こういう時じゃねーと、こういうのは一緒に探せないし。 やっぱりずっとして欲しいから、俺のセンスではなくて康史の趣味にあわせたい。 ちょっと頬を紅潮させて、俺の前を歩く康史は本当に可愛い。 顔は綺麗った方が分かりやすいんだろうけど、表情は本当に可愛く見えるんだよな。 「大丈夫、大丈夫、、、、」 振り返ろうとしたようだが、康史はふと歩みを止めた。 俺にも、康史が足を止めた理由はすぐに分かった。 ったく、静かにたまにはデートさせて欲しいんだけどな。 馬に蹴られて死んじまえだ。 大体人数は、7人、か8人か。 東高かなァ。黒い制服に赤いライン、うっとおしい。 ちょっと、最近奴らに俺は容赦ができなくなっている。 髪の毛も黒くしたのに、しつけーやつら。 面倒くさいけど、後がやっかいだしさらっと片付けるか。 「見ない顔だけど、この辺東高の陣地だって知ってる?通行料とるけど」 ちょっとイキがった感じの短ラン、プリン頭が俺のまえに出てくる。 あー、もしかして髪の毛染めたから、俺だと分かられてない系? 康史は、制服を見て僅かに身を引いて構える。 引くとからしくないけど、あんなことがあった後だしなァ。 「シラネ。通行料とか…………普通の道デショ」 それに、楽しいデートの最中なんだけど。 「ふざけてんのか、兄ちゃん。俺たちは、東高の……グヘッ」 とりあえずうるさいので、みなまで言わさず殴って沈める。 ざわりと周りがイキリたつのが分かる。 あと、6人。 「だいたい、道路だぜ?高速道路しか通行料とっちゃダメじゃない?まあ、俺ら徒歩だけどさ」 「テメェ、何ぬかしてんだ」 分かりやすい動きで、腹ごなしにもならない。 2人まとめて殴り倒すと、1人が俺に気がついたように指をさす。 「お、オマエ、ハセガワ!?」 「年上に呼び捨ては良くないんじゃない?」 2年ということは、カバンに律儀に書いてあるクラスでよくわかる。 「トール、人来た。逃げるぞ」 グイッと康史は俺の腕を引いて駆け出す。 こんなに、いつも派手に暴れても、警察沙汰にならないのはひとえに康史の引き際の良さのおかげだ。 俺は、康史の手を繋いで走って逃げる。 いつもの日常の続きが、今はとても貴重で嬉しかった。

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