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【番外編】卒業旅行→sideT

「こいつ、俺とヤスの小学校ン時のダチなんだ。ちょっと留年して卒業できねかったんだけど、聞いたらコイツも停学中で修学旅行いけなかったらしくてさ」 俺もいけなくて寂しかったしと、付け足して東山に紹介する。 東山は、少しだけ怯えたようにおずおずと手をさしだして、 「え、と……俺は東山輝矢……真壁君は、上川中だったよね?覚えてるかなって言っても、話ししたことはなかったけど」 東山は、士龍のことを知ってるようだ。 知り合いなら良かったと思いながら、飛行機のチケットを誠士から受け取る。 「あ!!東山君!?ああ、サッカー部の!?超人気モノの?うわー、なんで、なんで!?トール君と接点がみつかんないー」 笑いながら差し出された手を握って、嬉しそうに士龍は笑う。 「俺も、真壁君は有名だったから知ってるよ。喧嘩強くて頭が良くて……でも、東高に行くとか思わなかったけど」 「えー、東高だったらさー、トール君いるかなって思ったし。まあ、ヤッちゃんいるから、流石に勉強教えてもらってたよね。俺のリサーチ不足っ」 笑うとやっぱり天使の頃の面影があるんだよな。 いまは、でっかくなったけど。 ようやく、トイレから帰ってきたのか、仏頂面の弟もやってくる。兄弟っていったけど、あんま似てねえよな。目が同じ緑色がかってるくらいか。 「世話になります。俺、えーと、橘、虎王っす」 ぺこりと頭をさげて、士龍の荷物を手に持ち直す。 あれ、前は富田だったけど。士龍の前の名前は橘だったし。 「先週ね、タケオはとーちゃんのとこに籍をいれたんだよ。俺も、20歳になったら橘に復籍するし。結婚みたいでいいだろ?」 照れたようにへへへと笑い、士龍は説明してくれる。 まあ、実際兄弟なわけだしな。 兄弟で付き合うとか、あんま、俺には実感ねえけど。 ちらと見ると、東山は虎王と今度は握手している。 コミュ力高い東山で良かった。 仏頂面の弟も、なんとなく気が緩みはじめたようだ。 まあ、コイツが俺のとこに乗り込んでこなかったら、士龍にら再会もしなかったしなあ。 「シロは、飛行機乗ったことあんのか?」 「えー、俺、帰国子女だぞー。ドイツへの往復で乗ったし!」 胸を張って威張る感じは、やっぱり士龍は変わってねえなと思う。 「俺、初めてなんだよな。なんであんなん飛ぶんだ?」 「飛行機の羽の上と下の圧力差で揚力が発生するから浮くんだよ。それに、エンジンで加速させてるんだ……」 なんか、こ難しい説明を士龍が答え始めた。 んなこと、言われてもまったくわからん。 「なんか、よく、わかんねーけど、力で浮いて飛ぶんだな」 「えーと、そだね!なんかのすごい力で飛ぶよ!だから、安心して大丈夫!」 すぐに、士龍はそう返してくれて、別に馬鹿にしないから 安心する。 「そろそろ搭乗手続きするぞ!」 誠士は張り切った声で、カウンターの方に歩き出したので、俺は康史の腕を軽く掴んで、一緒に歩き出した。

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