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【番外編】やくそく【完】
意識がぼんやりと戻った時には、店の施設のシャワールームで康史に身体を洗われていた。
頭はガンガン痛むし身体も重たく感じていて、三連休をとっていて良かったと心から思っていた。
「トール……正気に戻ってきた?」
生ぬるいシャワーを浴びせて問いかけられ、軽く頭を頷かせた。
「……あ、ったま……いてえ……」
シャワーが止んでふわりとバスタオルがかけられて、身体をゆっくり拭われる。
身体を起こそうとするとギシギシと骨と肉が軋んで神経を苛むような痛みが走る。
「……ッく……ッ」
「だ、大丈夫?!」
おっかなびっくりの様子の康史に手を伸ばして、その頭に掌を置くと身を縮こませている様子に首を傾げた。
「……どうした……?」
「さ、さすがに怒るかと……ヤリ過ぎたし」
じっと見返す様子に俺は肩を落としてわしゃわしゃとその綺麗な巻き毛を撫でた。
「誕生日だろ。毎回は勘弁して欲しいけどな……。前からやくそくしてたし、覚悟はしていた」
ずっしりとした倦怠感と体力の消耗に立てるか不安になりつつ壁に手をかけて身体を起こして、ゆっくりと伸びをする。
肚の中にはまだじくじくとする痛みは残っているが、しばらく養生すれば大丈夫だろう。
メシは柔らかいものにした方がよさそうだ。
「だから、んな甘い顔ばっかするからオレに付け込まれるんだぞ」
脇に肩をさしこんで、身体を支えてくれる様子に頭を下げて顬に唇を啄むように落とす。
「別に構わねえだろ。俺はオマエにつけこまれたいわけだし」
囁きかけて浴室を出ると、真っ赤な顔をしてずるいを連呼する康史を俺はぎゅっと抱き寄せた。
「誕生日、おめでとう……ヤス」
万感の思いで告げると真っ赤な顔のまま、やっぱり王様には敵わないと呟いて康史は背伸びをして唇にそれを押し当てた。
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