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クールダウン →sideY

マンションに帰ってくると、東流は汚れた体が気持ち悪いとすぐに浴室へと向かってった。 車の中でも臭いを気にしていたし、なんだか心ここにあらずな表情が、いつもの東流らしくらなくて気になった。 きっと何かを言いだしたら、多分言い争いになっちまいそうな予感がした。 だから、俺は声をかけることも触れることも出来ずにいた。 ソファーにつかれきった体を沈ませると、誠士は心配そうな表情で隣に腰を下ろしてくる。 「康史、キモチは分かるけど。今は怒るんじゃねーよ。頭を冷やせよ。アイツ自身が、かなり堪えてる筈なんだから」 誠士は、言い聞かせるように俺の顔を覗き込んで忠告する。 自分の恋人が輪姦されていたのだから、俺は相当ショックを受けている。 被害者に向ける怒りはトラウマを増長させるだけだろう。 「ああ…………そうだな。俺が一番許せないのは俺自身だよ。トールが嘘ついてるのわかってたのに止めなかった」 「まあ、そうだろうけど。東流をひっぱたいたのは間違いだったな、アイツのあんな顔見たことないしな。フォロー間違うなよ」 叩かれた瞬間、東流が一瞬だけ泣き出しそうな表情をして俺を見ていた。 あれは、なんだ。 恐怖のような、強姦した時もあんな顔してた。 自分の体のことをなんとも思っていないで切り捨てるような東流の言葉に腹がたって仕方がなかった。 「ああ……分かってる」 眉根を寄せたまま不機嫌丸出しの俺の態度に、誠士は深々とため息を漏らした。 俺を諭すような目で見つめ、眉の間を指先でつつく。 「康史、顔こええ。普通にしてろって…………そんな顔してたら東流が離れちまうぞ」 ヒステリックに東流を責めたてちまいそうだ。 黒人に抱かれて、甘い声を上げてた姿が消えない。 当分消えそうもない。 だけど…………だからといって、東流を手放したりはしない。 「分かってるって……わかってっけど、あいつら全員ぶっころしてくればよかった」 イラつくキモチを、クールダウンさせなきゃいけない。 あれは、東流の意思じゃなかったんだから。 責めちゃいけない。

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