「ッ――グッ……っ……ウ、、グウウウ」 声を出さないよう堪えてうなる低い声と、じりじりと皮膚を焦がす音と、独特の焦げ臭いにおいが微かに広がっていった。 腕で押さえつけた東流の体は強張り、あげそうになる声を必死に耐えているのかベッドのスプリングに頭を埋め、シーツを握った手足を痙攣させている。 根性焼きよりも広い範囲、そして皮の柔らかい臀部への刺激に我慢強い東流も、流石に苦痛なのか背筋に脂汗が滲み出す。 「もう…………ちょっとだからな」 文字が刻まれていた膚はケロイド状に焦げて、痛々しく赤く腫れ上がっていく。 何度か熱しなおしたナイフを当てるたびに、海老のように背筋がびくんびくんとしなって、筋肉質な太腿が震えを刻んで全身を真っ赤に染めていく。 「っ――ッ…………ぐ…………ウウウ……ン……」 漸くゆっくりとナイフを外すと、赤黒く焦げた膚に消毒液を塗りたくった。 「―――ッ……ウウ……ッ……ウウ」 傷口にしみるのか声のトーンが少しだけ高めになっていくのに、俺は最中の声を思い出してつばを呑み込んだ。 むれないように大き目の絆創膏を何枚か患部に貼って、火傷のケロイドを隠す。 やっぱり痕にはなってしまうから、病院にいかせないといけないなと考えながら、荒い息を繰り返しながら横たわる東流を、いたわるように見下ろした。 しっとりと濡れた体は情事の後のように艶かしく、筋肉が浮き上がって上下する様子が、ひどく官能的に映った。 「……ンっう…っ………ハァ……ハァ……」 力の抜けた体をそっと撫でてやり、仰向けに返すと濡れた目元が不安そうな様子で俺の顔を伺うように覗き込んでくる。 心細そうな視線は、今までの東流にはありえなかったものである。 「……やべえな……トールのうめき声聴いたら勃っちまった」 「ぶっ………ホント……ヤスは変態だよなァ。そうだな……イイぜ、ヤろうぜ」 冗談ぽい俺の言葉に、東流はやっとどこか安堵したように目に光を取り戻し、口元にもいつもの笑みを見せる。 どこか頼りなげに見えるのも、いままでにはない反応である。 「おい……怪我人に手はださないぞ、それに俺も怪我人だしうまく動けないもんよ」 ノってきた東流に目を見開いて、思わずぶんぶんと首を横に振る。 勃起してしまったのは本当だったが、性的暴行を受けたばかりで疲れきっている相手をどうこうしようとは考えられなかった。 それに俺の足も折れているので、いつものように動くことも難しいのだ。 据え膳食わぬは男の恥ではあるが、相手を思いやりたいと、思っていた。