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余韻なき獣 →sideH

日高は時間になるまで、長谷川が気を失っているのにもかかわらず、長谷川の体を貪り尽くすように犯し続けていた。 抜かず5回とか、前に長谷川は言っていたけど本当だったんだな。 聞いてはいても、半信半疑だった。 日高の見た目は見ているだけなら、まるで性行為などしなさそうなくらいの現実味がない美形なのだから。 予備校の時間に間に合わなくなったのか、漸く長谷川を解放して、シャワーを浴びると後はよろしくねと言い置いて慌てて出ていった。 …………てか、置いてったよ。 その状況に俺はびっくりしたまま、体を汚したまま、ぐったりとベットに沈んでいる長谷川を眺めた。 こんなヤリ捨てみたいなことをされて、それでもいいのだろうか。 気持ちよさそうに日高の上で咽び啼いていた長谷川は、本当に淫乱でセクシーではあった。 「……う……っ…………ッン……」 しばらくたつと、瞼を重そうに開いてぼんやりとした表情をして、長谷川は俺を見あげた。 「…………大丈夫か?」 声をどうかけるか迷ったが、普段通りかけてみる。 相変わらず長谷川は、惜しげも無く裸体を俺に晒している。 「……あ、あァ……。………ヤスは、ヨビコー行ったの……か?」 眩しそうに額を押さえて視覚に影をつくり、かすれきった声で問われた。 俺はなんと言っていいのかわからず、ためらいながら頷いた。 そりゃあ、セックス終えて、すぐに先に帰られたらショックだと思うし。 「そっか、結構時間たっちまったみてえな」 予想に反してまったく寂しそうな顔すらせず、長谷川はパサパサの髪を掻きつつ、のろのろとらした所作でむっくりと起き上がる。 何を考えているのかまったく読めない。 俺に見られたことを恥ずかしがっている様子はもうまったくない。 そして気まずさもない。 「長谷川、水飲む?」 冷蔵庫からミネラルウォーターを出して手渡すと、一瞬驚いた表情を浮かべたが、長谷川は腕を伸ばしてアリガトウと受け取った。 喉を鳴らしてペットボトルを一気に流し込み、ふうっと息をついてから長谷川は俺を見返した。 長谷川は俺の反応を見るような表情を浮かべ、手の中のボトルを弄ぶ。 「ヒガシ、びっくりしたろ……?まるきし、SMだしなぁー、まあ、ヤスの趣味だけどさ」 いたずらっ子のような無邪気な笑顔。普段の人を睨むような顔しかしらないのであっけにとられる。 「長谷川もそういう趣味なのか?」 思わず長谷川に聞き返してしまう。日高はサディストなのはわかっていて、長谷川を調教中とはいっていたが。 「俺ェ?……ンなふうに見えるか?……まあ、俺もヤスがやりてーこた、全部一緒にしてえしな」 おかしそうな表情で噴出しながら言って、俺の反応を伺うような視線をなげる。 いつもよりくだけた感じではあるが、さっきまであんなによがりくるっていた男とはとうてい思えない。 分かっていても、この鋭い目でにらまれたら身が竦むだろう。 「幼馴染だっけ」 「ああ、幼稚園時からずっと一緒だな。アイツが俺と一緒にいなかった時期はねえな」 「長谷川は抵抗ないのか?あの、その、さ…………突っ込まれることに。逆でもいいんじゃないかと思うんだけど」 ずっと思っていた疑問をなげかける。 長谷川は、ちょっと考え込みつつ、やっぱそこだよなーと呟く。 「まあ、ヤスをヤッたほうがセクシーだろうけどさ。俺のでけーし、俺のが丈夫だし。」 なんてことのないような調子で言う長谷川は、多分普通のやつらとは配線がずれまくっている。 ずれすぎているから、周りの人間と相容れないのかもしれない。 「それにさ、ヤスは結構、俺の意図を汲んでくれる。今日だって、実際にヤりたかったのは俺だしなァ」 「え……そうなの?」 嫌がっている長谷川を、日高が無理矢理連れてきたって感じにみえていたが、長谷川にとっては違うようだった。 長谷川はふっと笑って、自分の体を見下ろす。 「あいつは時間ねえのに、無理してくれたんだ。見て分かったと思うけど、俺はすげえ淫乱なんだよ。一ヶ月もしてなくて、かなり我慢の限界だった。ヒガシもつきあわせて悪かったな」 だから、日高が今いなくてもまったく平気で、まったく落胆もしていないのだろう。 「俺は、興味あったから……」 「こんな強面の俺がどんな顔してヤられてるのかって?」 くっくっと肩を揺らしておかしそうに笑う長谷川に、凶悪といわれているヤンキーの面影はない。 「まあね。長谷川はセクシーだったよ。日高が夢中になるのも分かるな」 思わずほめ言葉にならないであろう言葉を告げると、長谷川はにやっと笑った。 「ぶっ、ヒガシ。俺ンこた東流でイイぜ。さあって、べたべたするし。体洗って帰るかな」 長谷川は腰をあげて、綺麗な筋肉をつけた汚れたからだを惜しげもなく俺に見せつけながら、浴室へと消えた。

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