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SOS →sideT

電話に出たのに、康史は腰の動きを止めない。 声を出させようとしているのもわかり、息をこらえるので必死なのだが、聞こえて来た声は聞き慣れた西覇の声じゃなかった。 快感で流されそうな、朦朧とした頭の中で考える。 『あ。すみません、俺………ええっと西覇の……』 電話の声もひどく呼吸が乱れていて、少し辛そうに聞こえる。 弟の西覇には、俺なんかよりもっとダチはいない。 たしか、こないだ、会ったことがある、西覇のカレシだったか。 「あ、セーハの彼氏か。………セーハは、……怪我でもしたかァ?」 電話できない理由は、かなり限られてくる。 怪我してる、意識がない、拉致られるの、いずれかだ。 俺の声の様子でら漸く康史は腰の動きをとめて、 「なんか、あったのか?」 と、俺の様子に心配そうに聞いてくる。 『いや……喧嘩に巻き込まれて……東高の奴等に拉致されて……』 西覇はそれなりには強いが、俺たちとは違って喧嘩なれはしていないし、技術ばかりでフィジカルはとぼしいからな。 それに、このカレシを守るというハンデがある。 「……どこ?」 とりあえず、カレシと合流して助け出さないとな。 アイツは俺と違ってうたれよわい。 『え、えっと、今は大山の方面です』 東高は大山の先の尾道という場所にある。 ここからなら、歩いて30分くらいかかるかな。バイクならもう少し早くつけるか。 せっかくのいちゃいちゃタイムだが、なにしろ弟が心配だ。 「………ヤス、とりあえずちんこ抜いて。セーハ、助けに行く」 電話を切ったあとでも良かったが、今は早くシラフにもどんないとならない。 「わかってるよ。俺も行くから」 康史は、ゆっくりとカラダを離してふうと深く息を吐き出す。 「ン………っ、っと、連れ込まれた場所とか分かったら電話くれ。そっち向かうわ。何人くらい?」 『15人以上いましたけど、西覇が10人は倒したんで』 「5くらいなら………まあ体力ねえけどいけるかなァ。ヤス、バイク乗せてって。なんとか10分くらいでいくから、とりあえず、場所だけよろしく」 一方的に伝えて電話を切る。 「ヤス、すまんな。セーハを助けたい」 「分かってるって、とりあえずカラダを拭いてやるから。オマエの弟は俺の弟だ。帰ってきたら、利子つけてやるからな」 恐ろしいことを言い出す康史をちらと見やり、俺は衣服を身に付け始めた。

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