197 / 405

油断大敵→sideY

大体、10人くらいか。 東流ほど人の気配には鋭くはないけども、すっかり喧嘩に慣れて、大体の人数は把握できるようになった。 初詣で絡んできた東高のやつらだというのは、長髪のボスの顔を見て、すぐに気がついた。 初詣の日に誠士が調べてくれた話だと、東高の2年の派閥でボスは金崎とかいうやつらだという。 それほど強いわけではないらしいが、陰険と有名らしいので気をつけろとは言われていた。 昨夜のうちに雪が降ったから、スリップは危険だとバイクは乗らなかったのだが、それが裏目に出たかもしれない。 「へえ、予備校通いとは、やっぱ北高のイケメン様は俺らとは違げえですねえ。ふうん、今日はボディガードのハセガワくんはいねえのですかねぇ」 人の悪い表情で笑いながら近づいてくるのを視界でとらえ、俺は身構えながら突破口をさがそうと視線をめぐらせる。 1人で奴らを相手にするのには、いささかキツイ。 「ツラの話と勉強は、まったく関係ないと思うけど……。まあ、トールは進学しねえし、一緒じゃない」 一応俺だって東流と一緒に喧嘩はしているが、北高の学年首位ではある。 東流にあわせてかなりランクを落とした高校だから、当然といえば、当然の結果ではあるが。 「最近別行動っていう情報があったんでな、狙うなら別行動してる今がチャンスだと、まあまあかしこいボクちゃんたちは考えたのよ」 どんどん距離を縮めてくる相手に、俺は突破口を探しながらじりっと後じさる。 タイマンだったら、一応負ける気はしない。 だけどこの数だし、うまく逃げないとフクロになっちまうのは目に見えてる。 何人………潰せるか……。 ざっと数えて3人は即効で潰せるが、後の7人は厳しい。どうすりゃあ突破できるか。 背後から襲い掛かってきた男を跳躍して、蹴りを腹部に叩き込むと、一気になだれるように猛者たちが群がってくる。 オンナに群がられることもよくあったけど、野郎に群がられるのは、ホントにきついな。 繰り出された拳を避けて、腕を掴んで投げ飛ばしながら活路を見つけようと、狭い路地へ目をつける。 あそこからなら、逃げ出せるか。 脚を引っつかむ男を踏みつけ、首根っこを掴む長髪を振り払って拳を胸板に見舞う。 ダメージはまだ少ないが、この人数相手にするには、かなりきつい。 どうやって逃げるか。 東流は昨夜ぶっこわしちゃったからな、今すぐに呼んでもグロッキーで使えないだろう。 路地まであと少しだ。 あそこからなら、ちと脇道に入ってすぐ駅に逃げ込める。 振り返り様に背後を狙っていた男の頭へと、とび蹴りを食らわせ一気に路地へと駆け込む。 ここから一気に駅まで………いけば…………ッ。 ダッシュを決めようとし、薄暗くなった影から黒い人影が見えたと思った瞬間に、びびびっと首筋に電流が走る。 な、にっ、、、、 ……スタンガン…かよ…ッ……ッ 徐々に意識が遠のいていく。 トール………。 真っ暗に視界がのまれていった。

ともだちにシェアしよう!