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第2話
誰かと一緒に帰るのは高校に入ってから初めての事だ。
「なぁ、途中でアイス食っていかねぇ?」
学校から駅に向かう途中にコンビニがあり、そこはよく学校の生徒が立ち寄る場所でもある。
巧巳がこのコンビニを利用したことは数回程度。しかも学校で使う筆記用具を切らした時しか寄らない。
買い食い自体が初めての事だった。
「今井はよく買い食いをするのか?」
「あ……、ねぇ、折角だし、下の名前教えてよ」
何が折角なのかはわからないが、委員長と呼ばれるのはあまり好きではないので素直に名を告げる。
「巧巳だ」
「了解、巧巳ね。俺は高貴」
「知っている」
せめてクラスメイトの名はフルネームで覚えようと、そう思ったからだ。
「わお、流石」
「覚えた所で呼ぶ機会など無いけどな」
「あるじゃない。俺が第一号ね」
と自分を指さして、呼んでみてよとワクワクとした表情で見つめられる。
そんな風にされると妙に恥ずかしい。照れつつ「高貴」と名を呼べば、すぐに「巧巳」と返してくれる。
何だかむずむずする。
「もしかして、照れているの?」
からかうように言われて、
「そんな事はないぞっ」
余計に照れてしまう。
「巧巳ってそういう反応を見せるんだ。了解、了解」
どう接すればいいのかと高貴なりに思っていたのだろうか。心なしか表情がホッとしたように見えるのは、気難しい奴だと思われていたからだろうか。
何だか気を遣わせてしまっている。
冗談の一つも上手く言えない巧巳は、なんだか申し訳ない気持ちになってきた。
いくら前岡に言われたからと、自分につきあわせるわけなのだから。
「あ……、今井、断ってもいいんだぞ」
「今井じゃなくて、高貴って呼んでよ。実は俺ね、巧巳の事が気になっていたんだ」
と両方の手を握られる。
「夏休みを一緒に楽しもう」
繋がった手を大きく振りながら楽しそうに笑う。
伝わる熱に驚いて慌てて手を振りほどく。
じりじりと熱くなるのは、夏の暑さのせいなのか、それとも高貴が触れたからなのか。
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