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 重たい衝撃を引きずったまま、激しく身体が揺さぶられる。かと思えば緩やかに変わって、物足りなくなったところで再び元に戻る。  リカちゃんはまるで、俺の心の中を全て見透かしているみたいだ。揺れて揺れて、揺られて止まる。いつの間にか部屋は2人の吐息で溢れ、その中に俺の声とリカちゃんが動く衣擦れの音が交じっていた。 「あ、あっ…………は、ぅ……うぅ、んあっ」  俺の身体はリカちゃんの動きを拒絶したりしない。自分のものなのに、俺じゃなくリカちゃんに従いやがる。普通に考えたら苦しいはずの行為が、嬉しいだなんて変だ。 「リカちゃん、そこ……っ、だめ。やだ、そこやだ」 「そこって奥?それとも、ここ?」 「ヒッ、あぁっ、んあ……アァッ、やだやだ」 「ごめん。どっちも慧君の好きなところだった。間違っちゃった」  弱いところを突かれ身体が反ってしまう。後ろから俺を囲うリカちゃんは、そのまま俺の肩を掴み、強引に自分へと引き寄せた。 「あっ、これやだ!やだやっ…………んああぁッ」  膝立ちになった身体を、やっぱり後ろから攻められる。震える内腿が立っていられないって訴えてるのに、リカちゃんは許してくれない。  俺と同じような体勢になり、背後から全身で包まれて。回ってきたリカちゃんの手が、俺のモノをそっと掴んだ。 「慧君は俺に抱かれてる時が1番可愛い顔をするね」 「や、あぁっ……ンぁっ、そんなの、知らな」 「ほら。今だって口を開けたままで、真っ赤になって」  後ろの中をめいっぱい満たされ、ぐずぐずに濡れるモノを扱かれ。それだけでも溢れちゃいそうなのに、リカちゃんは俺に顔を寄せてキスまで求めてくる。  それに必死に応えるけど届かなくて、俺は思わず舌を出した。 「うん、いい子」  同じようにして舌を覗かせたリカちゃんが、俺のそれを包む。唇を合わせないキスは、いつものそれよりも興奮した。 「んん、んぁっ…………きもち、い……いっ」  繋がったところから溶けてしまいそうなほど、ぴたりと合わさった身体。自分がリカちゃんの為にあって、リカちゃんが俺の為にあると感じる。お互いに他ではダメなんだって思える行為に、今日もまた夢中になってしまう。  そうして、だんだんと肌を打ち付けあう音が激しさを増し、時間の感覚がなくなってきた頃。既に身体が言うことをきかなくなった俺は、リカちゃんに支えられてやっとの状態だ。  大きなモノを咥えた蕾は軽く痺れ、それでも離したくないと力を緩めはしない。最後の最後まで、リカちゃんと一緒がいい。 「リカちゃん、リカ……ちゃ、ん……き、もちぃ」 「……っ、俺も、慧と同じ」 「んんッ、深……っいぃ……いやだ、激しっ、すぎる」  パン、パンと弾く音の奥でリカちゃんが声を噛み殺す。時々漏れる小さな呻き声が聞きたくて、でも聞こえてくるのは自分の声と妖しい音ばかりで。 「リカ、ちゃ……リッ、ちゃ」  あまりにも気持ちよすぎて怖い。俺をここまでできるのはリカちゃんしかいないけれど、もしリカちゃんがいなくなったらと考えると、震えてしまう。 「リカッ……ちゃん、っあ、いあっ」  息をするよりも名前を呼びたい。傍にいるって教えてほしくて、とにかく呼びたい。 「リカちゃんっ……リ、くぁっ、ひっぅ」  どろどろに濡れたモノの先端を、ギリリと親指で抉られる。すると痛みじゃなく快感の方が襲ってきて、俺はベッドに沈んだ。もう身体に力が入らない。 「やあぁ……あっ、んぁ、んんんッ、っぅ」  指すら動かせない状況で受け入れること数分。2度目か、もしかしたら3度目かもしれない。またあの感覚が湧き上がってくる。  くすぐったくて熱くて、膨らんで弾けてしまいそうな快感。あと1歩でも踏み出せば、真っ逆さまに落ちていく寸前の、あれ。  こうなってしまった俺に残される手段は1つだ。 「いっ……アーッ、い、くっ……イク、イッ」  何にも縋れないまま絶頂の兆しに耐えていると、リカちゃんが俺の手を包んでくれる。 「俺も、出そう」  耳元で紡がれた声にリカちゃんも余裕がないことを知る。すると、胸の奥がざわざわと騒いだ。 「このまま……っ、出す、よ」  存在全てで俺を飲み込もうとするリカちゃんに委ねれば、その瞬間はすぐに訪れた。 「まっ……や、ァ、イク……いッ──ひ、あぁぁッ」  白く弾ける視界。ふわふわと浮く頭に、悲鳴にもならなかった声。最奥に放たれた熱をそのままに、俺は何もかもを投げ出した。肌に触れる濡れたシーツの気持ち悪さすら、今は感じない。  今この瞬間が幸せすぎて、ずっと続けばいいのにって思う。

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