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第1話

呪術師に急な呼び出しがあり、王都に近い街まで出張が入った。 だが男を一人残して行きたくない呪術師は出かけたくないとごねた。 召喚状を渡されてもごね、 男がアグラディアに頼まれ支度を整えてもごね、 迎えに来たアグラディアが散々説得してもごね、 ようやく来た出発当日になっても玄関でまだごねていた。 「決めた、やっぱり行かねえ!俺なんかがいかなくても、誰か適当なのがいるでしょう?なんで今になって……!」 「その適当なのが軒並み食中毒でダウンしてるんだってば!おっさんからも何か言ってやってくれよ」 「ほら先生、仕事は大事だぜ?俺のことが心配って言うけどよ、こんな厳つい大男になにかしようとする物好きはいねえから、安心して出かけてこいよ」 「今の聞いたかアグ?!あーだめだ、やっぱり俺は残る!」 「はーいはい、馬車がもう待ってるからね。早く乗ろうねぇ」 アグがさっと手をあげると、玄関前で待機していたアグラディアの部下達10人ほどが呪術師を持ち上げて運んでいく。 「うわっ!てめえアグ!人海戦術たあ卑怯な!」 「へえへえ。恨み言は道中で聞くからさぁ。……じゃ、おっさん、後の事はたのむよ。くれぐれも診療所の結界から出ちゃだめだかんね」 「お、おお。先生の事、よろしくな」                        ◇ そうやって大騒ぎで馬車に詰め込まれた呪術師を見送ったのが一週間前。だがもう何ヶ月も前のような気がして、男は鍋をかき混ぜる手を止めた。 一人暮らし歴はそこそこ長いから寂しいのは慣れたと思っていたが、誰もいない診療所、 特に呪術師の居ないベッドは広すぎた。 食事をしても、家事をしても、夜になっても朝になっても呪術師は居ない。 自分が送り出したとは言えその空虚は堪えた。 それに、日を空けることなく男を貪っていた細い指、薬草の香りが落ち着く長い髪、心細い時に必ず隣りにある筈の温もりが無いことで男の芯は呪術師に飢えていた。 ここしばらくしたことのない夢精を経験して、一人赤面したのは秘密だ。 こんな感覚もあったなと下着を洗濯しながら思い出す。 だがそれも今日までだ。 呪術師の好きなクリームシチューに買ったばかりの生クリームを注いで味見をする。 料理は抜きん出て上手というわけではないが、呪術師はいつも残さず平らげて欠かさず「美味かったぜ旦那」と褒めてくれる。 予定の時間まで少しある、今のうちに仕込んであるパンも焼いてしまおうか。 呪術師は帰ってくる前に村役場に寄ると言っていたからまだ猶予はあるはずだ。 男がオーブンに手をかけると、急に玄関が開く音がした。 乱暴なそれに少し首を傾げながら振り向くのと、キッチンのドアから呪術師が飛び込んでくるのはほぼ同時だった。 「旦那!さっきこの辺に来た怪しい訪問販売から何か買ってねえでしょうね?!」 「先生おかえり!早かったな」 「ただいま!……ってそうじゃねえ!」 駆け寄る呪術師はテーブルを見て大げさに目を見開いた。 「これは……!」 そこには空になった生クリームの瓶。 「あ?ああ、さっき丁度よく行商さんが来たから、他にも色々買ったぜ?」 それを引っ掴むと、呪術師はこんどはゴミ箱を引っ掻き回しだした。 程なく目的のものを見つけたのか、呪術師はそれを掴んだままその場に崩れ落ちる。 手の中にあるのはプリンカップの空容器。 杞憂であってほしくて、一応念のため空になったプリンの容器の表示を確認する。 ああ、間違いない。 尋常ではない様子に男が怪訝な顔をして近寄ってきた。 「どうしたんだよ?ゴミ箱なんかあさって。プリンならちゃんと先生の分もあるぜ?」 「旦那、いいか?こいつはな、さっき村役場でお縄になった無認可業者の獣人乳製品なんでさあ」 「獣人乳製品?へえ高級品なんだな、随分安かったけど」 「高級品なのは認可されて安全性が確認されてる獣人乳製品だけだ。品質調整、魔力検査、そういうものをすっ飛ばした闇製品。それがコイツだ」 ため息混じりに席に着く呪術師が空のプリンカップを置いた。 「えっ、それはつまり、もしかして……やばい……?」 「ああ、本来なら滋養強壮、栄養満点、美容亢進のすぐれた乳製品だが、処理してない無認可乳製品を魔力過多の人間が食うと一定の確率で……」 ごくり、男がつばを飲む。 呪術師は低い声で告げた。 「母乳が出る」 「ええ!?」 青くなる男。目の前には空になった容器が5つ。 呪術師がジト目で男を責める。 「しかも5個も食っちまいやがって……」 「で、でもよ、俺は男だぜ?普通母乳ってのは子供の居る女の出すものだろ?」 「ああ、普通ならな。村にいる他の連中ならまず問題ねえさ。しかし、おめぇさんは人より遥かに魔力量がある。しかも、色々あったせいで属性は淫に偏ってて、今はそいつを制御するために目下治療と修行中なんだよ……。忘れちまったかい?」 「うっ」 「大体、出入りの信頼できる商人以外からものを買うなって、俺は口が酸っぱくなるほど言ったぜ?それをアンタ……」 ぐったりと長い髪をかきあげる呪術師。 一方男は実は内心あまり動揺していなかった。プリンは美味しかったし、いきなり母乳と言われてもピンとこない。 (先生は相変わらずおおげさだよなあ)と思うが口にはしない。 だが呪術師の説教を聞いていると、ふいに自分の胸に熱を覚えた。 なんだか少し、篭るようなじわっとした、感じたことのない感覚。 (あれ?なんかチリチリする……?) 違和感に戸惑う男を尻目に呪術師は苦虫を噛み潰すような顔で続ける。 「ずっとここに閉じこもりっきりだったとはいえ、甘やかしてきた俺が悪いんだがね…。それにしても先日の西の街の件といい、警戒心が足らねえ、足らなすぎる」 そう言うなり、呪術師は男を肩に担ぎ上げた。 「ん?え?ちょ、ちょっと!」 慌てて藻掻く男。だが腕を抑え込まれたまま腰を強く抱えられてどうにもならない。 ずんずんと廊下を進む呪術師。 「だからな?……今日はお仕置きだ」 ドアを蹴破り、どさりとベッドに男を投げ出した。 スプリングが大きくたわみ、巨体を受け入れると揺れを利用して男はなんとか起き上がる。 「うわっ、ちょ、俺は男だぜ?!母乳なんかでねえよ!大丈夫だってば!」 「そいつはどうかな?」 呪術師が男の胸を服越しに下から軽く持ち上げる、するとシャツに白濁液がにじみ出て乳首の位置にシミを作った。 「んっ、……あれ?なっ!なんで?!」 「牛獣人のミルクは体質によっちゃあその辺の薬より強く魔力と乳腺に働きかけるんだ。それは魔力を乳に変え、魔力に則した効果ももたらす。闇なら睡眠欲、光なら過活動、」 呪術師がいつの間にか限界まで張り詰めている男の股間をズボン越しに軽く弾く。 「あぁんっ!」 思わず上がる甘い声。 いつのまにか熱を帯びだした身体に気づき、男が驚き思わず口元を抑える。 満足そうに舌なめずりをする呪術師。 「淫の魔力なら性欲亢進って具合にな」  呪術師はクローゼットから鍵の付いた箱を持ち出した。 「さぁてお待ちかねの治療だ旦那。お察しの通り薬物治療の基本は速やかな排出が肝心。そこでこいつの出番だ」 蓋を開ける。 「こいつは近所の牧場からの依頼で作った試作品。まさかこういう使い方をする日が来るとはねえ」 手のひら大の半透明でぷよぷよした塊を2つ取り出す。不定形のまま揺れ、端には転送魔石がついているのが見える。 「それ……スライム?!」 「そうさ。ああ、安心しなせえ。ちゃんと制御式を埋め込んであるからこの間のピンクスライムみてえに暴走はしねえ。元々は雌牛の搾乳機なんだがね、材料のスライムがちっと小さくて納品できなかった分が残ってたのさ。ミルクを絞って、離れたタンクに転送するコードレスな一品だ。雌牛には小さいが、でも、アンタにはおあつらえ向きだな」 「ちょっ、まてっ!落ち着こうぜ先生!」 慌てた男がベッドから降りようとしたのを見て、呪術師が指を鳴らした。 するといつか見たようなロープがベッドの下から這い出てきてあっという間に男をベッドへ固定する。 「っ!これっ、あのときの……!」 ぎしっ。 ロープの張り詰める音。 ベッドへ勢い良く引き戻された男が、両手をまとめ上げられた姿勢で抗議した。 「先生!ずりいぞこんなの!!」 だが呪術師は鼻で笑うだけだ。 キャンキャン騒ぐ男を見下ろしながら指で空中になにかを書く。 するとそれは紋様となり緑色に発光し、スライムに吸い込まれていった。 「さすがに牛と全く同じ機能設定じゃあつまらねえからな」 片手で男のシャツのボタンを手際よく外す。ツンと尖った乳首が紅く染まり、そこからは白いミルクが滲んでいた。 それを人差し指でつまみ、軽く揉む。 「ああっ、やめぇ」 「多少熱っぽいが、大丈夫だろう」 呪術師は指についたミルクを美味そうに舐めとると、男の乳首にスライムをのせた。 「うっ」 「ちょっと冷たいか?まあすぐに馴染む」 もにょもにょと蠢くと、スライム搾乳機は自分で男の乳首を見つけるなりちゅうと吸い付き出した。男の知る搾乳機とは違い、形が乳首や胸に合わせて変形するらしい。 ぐよんぐよんと蠕動して胸全体を大きく揉み込みながら、乳輪と乳首に食いついてくる感覚が甘い刺激となって男を揺さぶる。 「ああっ!!くっ、やだぁ……!」 「ここからがキモだぜ旦那よく聞きな。さっき説明したとおり、旦那は今魔力が乳に変換されている状態だ。魔力は基本的に性的興奮でも増大する。淫属性の魔力ならなおさらだ。性的に感じると魔力が増大して乳量が増える、乳量が増えると搾乳機の動きが強くなる、搾乳機の動きが強くなると旦那は余計に気持ちよくなる」 「ふぁ?」 「ようするに、気持ちよくなっちゃ駄目ってぇことだな」 搾乳スライムは自身の硬さを巧みに変えて、ちょうど前歯で扱くように動き始めた。 快感が高まる度にミルクは吹き出し、スライムにどんどん吸収されていく。どこかにあるミルクタンクに転送されているのだろう。射精感とも違う感覚につま先が反った。 「ひぁああっ!」 「ほら旦那。言ってる側から駄目じゃねえか。スライムが喜ぶだけだぜ?」 呪術師の手が男の顎を取り上を向かせる。 「む、無理ぃ!」 首を振る男はすでに涙目だ。 一週間ほぼ性行為なしの身体を搾乳機の強い刺激がヒリヒリと焼き焦がす。 今すぐ縛めを解いてほしい。 そして疼く中心を乱暴に貫いてほしかった。だが呪術師はにっこり笑うだけだ。 「プリン5個分のミルクを出しきるまで、気持ちよくならないようにがんばれよ。」 「先生!ううっ、ほどいてえ」 ギシギシロープを鳴らして藻掻く男を尻目に、呪術師はローブを着替えてドアへ向かう。 「お仕置きだっていっただろう?じゃ、俺は残ってる仕事片付けてくるぜ」 そう言い残すと呪術師はドアを開ける。 「ま……!」 まってくれ、そう叫ぼうとした男に、胸のスライム搾乳機が両乳首を同時に摘み上げる。 紅く熱っぽい果実に弾力のあるスライムの歯が食い込んだ。 「あああっ!」 呪術師は男の悲鳴に振り向くことなくドアを締め、鍵を締める重い音が無情に響いていった。                     ◇ 「おや?先生帰ってたのかい?」 診療所に隣接している雑貨屋で品出しをしている呪術師の前に、顔なじみの老人、オリバーが現れた。 呪術師とはいつもチェスやら将棋やらをしていく仲だ。 「ええ、さっき戻ったんですよ。留守の間なにか変わったことありませんでしたか?」 「大したことはなにもないねえ。ああ、でも村の駐在さんトコが騒がしかったな。なんでも不良在庫を違法に売って回ってた悪徳行商が捕まったとか」 「へえ。物騒ですねえ。被害はあったんですかい?」 「いや、早めに見つかったのもあってほぼ無事回収したらしいよ。被害報告も無いそうだ。まああんな怪しい行商人から買うような人もそうおらんだろう」 「ですよねー……」 若干目の泳ぐ呪術師。 「それより、アンタ暇があるなら一戦どうだい?」 どうだい、と言いながらも老人の脚は診療所の待合室に向かっている。 呪術師はやれやれと肩をすくめてついていった。                      ◇ 三時間後。 一戦といいつつも後一回、後一回だけと粘るオリバー相手に呪術師がようやくバレずに「負けられた」のが先程のこと。 今更ながら早めに店じまいをし、早足で寝室へ戻る。 「(魔力が母乳に変換されてるから脱水はしねえはずだが、ちっと長く置きすぎたか……)」 ドアを開けると、そこには結界で中和しきれない濃密な魔力フェロモンが吹き出してきた。 「うっ、……こいつはすげえ……」 耐性があるとはいえ、一度に吸い込まないように呼吸を整えながら進む呪術師。 そこにはこの三時間で乳首を責めに責められ搾乳された男が、ドロドロになっていた。 「せ、せんせぇ……?ああっ!」 呪術師の気配に目を開く男が、今や胸部全体を覆うほどに膨張したスライム搾乳機に揉み上げられて背を逸らす。  窓から差す傾いたオレンジの陽の光が男を照らしている。  スライム搾乳機からいくらか溢れたミルクが割れた腹筋を伝い、ズボンまでも濡らしている。  藻掻いた末に肌蹴たシャツは見る影もなく、太い脚には大蛇のようにロープが絡みついてギシギシ淫靡な音を立てた。  いつもはキリリと墨をひいたような眉は悩ましげに顰められ、快感に嬲られ続けた目には淫蕩な膜が張ったように潤んでいる。  透明なスライム越しに浮かぶ朱色は散々絞られた乳首だ。自身から噴出したミルクですっかりふやけ、スライムの歯や舌で舐られて、遠目にも美味しそうに熟れていた。  「これはこれは」  呪術師は歩み寄るとスライム搾乳機越しに男の乳首をぎゅっと絞る。  「ひぎぃっ!」  三時間前は触れるだけで迸ったミルクは、今やつまむ程度では僅かに滲むほど。  「ふん。大体絞り尽くしたってとこかね。どうだい旦那?気分は」  「これ、取ってぇ、お、おかしくなっちゃうぅ。あああっ」  一層強く揉みあげるスライム搾乳機に白いミルクが充満する。  「お?まだちっと出るみてえだな。もう少ぉしがんばりな」  「む、無理ぃ」  元々敏感だった乳首だけを責められ続けて熟れた肉体を持て余し、男が無意識に腰を揺らす。反らされた首に光る汗が夕日を反射して艶めかしい。  呪術師が煽るように薬指で鎖骨をなぞると、苦しげな呻きがこぼれ落ちた。  「搾乳機を取ってはやれねえが、流石にそのままじゃ気の毒だな」  「ああっ」  呪術師が男のズボンを引きずり下ろす。そこには苦しげに張り詰める男根があった。外気に触れピクンと揺れるそれは変わらず大ぶりで、美味そうに紅潮している。  すでに何度か達したらしくねっとりと精液にまみれた様に、呪術師は美しいものを乱してやったときのような高揚感を感じた。  汚れたそこを拭いもせずに、赤い舌で舐め上げる。  「はぁっ、せ、せんせ……!」  「ここも苦しいだろ?たくさん出していいんだぜ」  言うなり、口の中にそれを一気にすすり込む。  「あっ!ああンっ!」  何度も達したはずのそこはたちまち大きく膨らみ、呪術師の細い舌に煽られる。強く吸われたかと思えば濃厚なキスをするように舌が粘膜を擦り上げ、開放されたかと思えば裏筋に歯を当て刺激される。亀頭に舌が触れると、男が鳴いた。  「ンあっ、さきっぽ、だめえぇ!」  舌先で鈴口を犯され、袋を両手で揉まれ、唾液と蜜が混ざったそれがシーツに染みを作っても呪術師は容赦しない。 腰が抜けそうなほどの快感で男が射精をしても、じゅぷじゅぷと責め立て休むことを許さない。逃れようとしても腰を抑え込まれていて叶わない。 「もう出たからぁ!もう、そんなに、無理ぃ!!」 男の鍛えられた体躯が必死で藻掻くが、その全ての力を押さえ込みロープが軋む。 うねる筋肉の上を汗とミルク、精液が滑り落ち、フェロモンと合わさって信じられないほど甘く香った。 呪術師が責める間もスライム搾乳機は活発に働く。 男が感じるほどに乳量が増す事を覚えたようで、先程から乳輪を先の丸い棘を作り刺激しながら先端を強く吸い上げている。胸全体を覆う部分も小さい舌が絶え間なく蠢き、休む隙間を与えない。 変幻自在の搾乳機は大体の大きささえ合えばその乳房を完璧に支配する。加えて自己学習機能と呪術師特性の「式」で今や男の胸を一方的に蹂躙する獣だ。 「やぁあ、おっぱいの、はずしてぇ!同時は無理ぃ!!あうっ!」 息も絶え絶えに訴える男。 ミルクプリンの作用が切れればミルクの分泌もとまり、搾乳機も自動で外れるが、この調子では今夜中に外すのは難しいかもしれないと呪術師は思った。 ちゅぱっ。 音を立てて呪術師が顔をあげる。  「どれだけ吸っても次から次へと溢れてきやがる。言っただろ?気持ちよくなっちゃダメだって」  「せんせぇ、せんせぇえ!ああっ、駄目なんだよぉ、くぅっ!ロープ、外してぇ」  「そりゃできねえ。お仕置きだからな」  「そんなぁ!はあっ、んんっ!」  涙にくれる男の耳に、呪術師は低く囁く。  「……そうだな、上手におねだりできたら、助けてやってもいいぜ?」  できるかい?と促すと、男が涙を飲み込みながら俯く。  「んぐっ、ああっ、前じゃ、足りねえぇんだよぉ」  「足りない?どこに?なにがほしいんだい?」  「後ろぉ、いつものトコに、先生のが欲しい……っ!」  呪術師が指を鳴らすと、男を拘束していたロープがグルンと男をひっくり返した。 自由とはいえないが、身動きを僅かに許すだけ緩む。  「いいぜ旦那。でももう少しわかりやすくお強請りしてみな?」  震える膝で腰を持ち上げ、恐る恐る男の指が後孔を広げる。  誰がいじったわけでもないのにそこは潤み、ピンク色にほどけていた。  ひくんひくんと待ちわびるように蠢く淫肉。  「……ここにぃ、……せんせいの、おっきいのを、あああっ」     艶っぽく掠れた声が言い終わる前に、呪術師は剛直を突き立てた。  一気に差し込まれたそこは急な快感に悶えるように収縮し、男の喉が上に反らされる。  「あーあ、こんなにトロットロにして……。」  「ひぐっ!らって、一週間も会えなくて……!うあっ!」  「寂しかったって?可愛いこと言ってくれる。でも今日のはいただけねえなあ旦那」  「ご、ごめんなさい、あうっ、ごめん、ああン!」  「まさかとは思うが、俺が居ねえ間。だれか咥えこんでねえだろうな?」  男を押さえ込む腕に力が入り、一層低くなる剣呑な声に男がかぶりを振る。  「ないっ、そんなことしないぃ!」  「はは、この締付けぶりじゃそうだよな」  呪術師が繋がったまま男をひっくり返す。ロープはいつの間にか消えているが、甘い刺激に浸された男はなすがままだ。そのまま呪術師の膝に抱え上げられて、重力のままに一気に胎を貫く。悲鳴をあげる男。  「あああっ、ふ、深いぃ!!」  「くっ、あんまり締め付けるんじゃねえよ。イッちまいそうになる」  「やっ、ああっ、せんせぇっ、せんせえぇっ」  男が幼子のように呪術師にしがみついてくるのを見て、呪術師の眼光が少し緩む。  よしよしと頭を撫でてやれば、子犬のように擦り寄ってきた。  「さみし、寂しかった……」  長いまつげを伏せて縋り付く男の瞼に、呪術師の唇が落ちる。  「……随分待たせちまいやしたね」  「せんせぇ、ああっ、あんっ、あああっ」  浅く、深く、揺さぶられる度にあがる嬌声。  いつの間にか暗くなっている室内を月明かりだけが照らす。  男の男根からは止めどなく蜜が流れ続け、溢れたミルクと一緒に男と呪術師の肌をつなぐように滴った。  ぐちゅぐちゅ。  ずちゅずちゅ。  どこからの音かも分からぬ水音はいつまでも響く。  いつもならとっくに音を上げ気絶しているはずの男はフラフラになりながらも呪術師に答え続ける。  「せんせ、せんせぇ」  「ああ、俺はここに居やすぜ」  「好き、……すきだから、……だい、好きぃ」  「俺も好いてます。旦那」  少し前の事件以来、割合素直に愛を囁いてくれる呪術師だった。  男は下から打ち付けられながらも、幸せそうに笑う。  「ああっ、せんせぇ、もっとぉ」  言葉のことなのか体のことなのか、ピンク色の靄の掛かった瞳で男が強請る。  「愛してます、アンタの事がいっとう大事だ……っ」  呪術師が幾ら貪っても満ちることのない飢餓を込めて楔を穿つと、男が楽器のように鳴く。  思う様に乱れる男に当初の思惑も忘れ、夢中になった呪術師が男を貪る。  結局朝が来るまで睦み合いは続き、疲労からベッドに沈む男に呪術師は歪んだ征服欲に満ちた笑顔を浮かべるのだった。                       ◇  朝日がでて、腹をすかせた呪術師がキッチンに降りると呼び鈴が鳴った。  のんびりドアを開けると、そこにはアグラディアが居た。  「はいはい、……なんだアグか」  「師匠ー、お届け物ですよう……あ、もしかしてお邪魔しちゃった?」  ラフ過ぎる格好をしているのを見て顔色を変えるアグラディア。だが呪術師はあくび一つして首を振った。  「いや、済んだ。で?」  「あっそ……小包み持ってきたよ。一応危なくないかチェックしたけど、カード類は見てないから」  「ああ、留守の間荷物はそっちに行くようにしてんでしたっけ。悪ぃな」   小包を受け取る。差出人の偽名臭い名前には覚えはない。  「ん?旦那と俺宛?」  怪訝な顔で包みをあけると、王都で流行りの美しい薔薇の砂糖菓子とメッセージカードが同封されていた。  そしてそこには男へ向けられた愛の言葉と、「貴方の虜」の署名。署名の下にはご丁寧に見覚えのある紋様の透かしまで入っている。  「これ……」  「旦那に淫紋をつけた例の淫魔か……。ちっ、余裕たっぷりだなあの野郎」  「この間捕まえたのは別口だったんだって?」  「淫紋を鑑定中だが、おそらくな。確定するまでまだ旦那には言うなよ」  「そっかあ。でもコレが届くってまずいんじゃない?」  「複数の候補場所に幾つか送りつけて反応見てる可能性もあるから、すぐには動けねえが、まあ、まずいな」  あちゃー、という顔で覗き込むアグラディア。  次の瞬間、  ひゅぼっ。  呪術師の手の中でカードが燃えた。  「おわっ、火ぃつけるなら言ってよねぇ!」  前髪が少し焦げたアグラディアが慌てて身を引く。  構わず煙管にその火を移す呪術師。  煙を吐いて、玄関から二階を見上げる。  結界伝いに穏やかな寝息を立てている男の気配を確かめながら、  「……渡すもんかよ」  と呟いた。

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