5 / 5
第5話
「なんで猫山は、猫になったんだ?」
翌朝、猫山はやっぱり猫耳と尻尾をつけたままだった。
「おれの将来の夢だから」
猫山はトーストをかじりながら言った。
やっぱり猫舌なのか、熱いと言って上手く食べられないでいる。
「ああ、小3の時に言ってた、アレか」
小学校の作文かなにかだっただろうか。
小学生とはいえ、3年生になる頃には、もうみんな「ヒーロー」や「お姫様」の夢を諦めている。
そんな中で猫山は、頑なに猫になることを主張していた。
「なんでそんなに猫になりたいんだ?」
たしかに、日がな一日眠ったり、愛でられたり、のんきに気ままな生活は憧れるところもある。
でも、猫山のように、耳や尻尾を生やしたいとは思わない。
「宇久井(ウグイ)が言ったから」
猫山が俺をじっと見て言った。
「え? 俺が? なんて」
「猫がほしいな、って」
そうして彼は、10年かけて、夢を叶えたのだ。
終わり
ともだちにシェアしよう!