22 / 213

第22話

アキラに祝ってもらえて… 今までで一番嬉しい誕生日だ、と実感しながらお礼を言うみずき。 「うん、じゃぁさ、誕生日プレゼントないから、お前の言うこと、ひとつだけ聞いてやるよ…何かしてほしいコトある?」 甘く囁く。 「…え、いいよ。アキラ、そんな…」 さらにドキドキしながら、一応遠慮してみるみずき。 「なに?オレがしてやるって言ってるんだから…それともしてほしいこと何もないとか?ふーん、じゃ、お前にはもう何もしてやらなーい」 いたずらっぽくアキラは言葉を出す。 「あ、いや、そうじゃなくて…」 「じゃ、なに?」 「えっと…」 「遅い!3、2、1…」 痺れを切らしたように、素早く秒を数えるアキラ。 「あ、て、手料理…」 みずきも慌てて言葉を出してしまう。 「は?」 「…アキラの、作った料理が、また食べたい」 なんとか伝えるみずき。 以前、一度だけ…家に来てチャーハンを作ってくれたことがある。 その美味しさは忘れることができない。 「そんなコトでいいのかよ?もっと、欲望的なモノ言えばいいのに…ま、いっか…」 アキラは首を傾げたあと、また微笑みを向けてくれる。 「充分だから…」 「よし、じゃぁ、これから家で作ってやるよ。買物して帰ろ」 「あぁ、ありがとう…」 みずきも笑顔でお礼を言う。 「いいって、ほら!」 アキラは頷くと片手を伸ばしてくる。 「え…」 「今日は特別!」 そう微笑むアキラ。 みずきの手を取り、手を繋いでくれる。 「アキラ…。あぁ、行こう」 そんな、優しいところ… すごく好きで…全部好きで… アキラの傍にいる今を、なにより幸せに思うみずき… アキラのぬくもりを感じながら… その道をゆっくり歩んでいく2人。 そんなこんなで成り行きで近くの食料品店に買い物にやってきたみずきとアキラ。 アキラはスタスタ店の中に進んで行く。 みずきは買い物カゴを準備してアキラを追う。 アキラに追いつくと… 「で?何が食いたいんだ」 振り返り首を傾げて訊いてくる。 「アキラが作ってくれるなら何でもいいが…」 「えー、何でもいいが一番困るんだよ、なんか言え!」 相変わらず強気な態度のアキラ… 「…ええと、それなら…チャーハンを…」 みずきはアキラを怒らせてしまったかと慌てて答える。 「チャーハン?そういやずいぶん前に作ってやったことあるな?」 「あぁ…」 あの日は…嬉しいことと悲しいことが…両極端の日だった… 心の端で思い出すみずき… 「んー、でもチャーハンだけってのもなぁ…」 アキラはマイペースに首をかしげている。 「……」 「あ、そうだ。餃子作る?」 そう言いながら目に付いた餃子の皮をカゴに入れる。 「皮…?具から作るのか?」 「だって既製品だと何が入ってるか分かんないだろ?」 などと答えながら、中身になる挽き肉やらニラやらをみずきの持つカゴに入れていく。 料理などしたことがないみずきには、それだけでアキラを尊敬してしまう。 「誕生日にチャーハンと餃子だけっつーのもな…あと何がいるかな…」 「いや…」 みずきとしては、アキラの手料理が、充分すぎる豪華メニューなのだが… 「お前、子どもの頃、誕生日とか祝ってもらってた?」 不意にそんなことを聞くアキラ。 「あぁ、昔は普通に祝ってもらっていたが…」 「んー、その普通がよくわかんねぇんだよな…ケーキとかで祝ってたのか?」 誕生日祝いなどされたことがないアキラ…首を傾げる。 誕生日はとりあえずプレゼントをするくらいしか思い浮かばない。 「あぁ、いつもより少し豪華な食事と…丸いケーキ、それにろうそくを立てて吹き消していた」 「ケーキにろうそく?」 白い仏壇用のろうそくを思い浮かべ、やや怪訝な顔をするアキラ… 「あぁ…年の数だけケーキに立てていた」

ともだちにシェアしよう!